刊行にあたって

 ターンキーとは、顧客がキーを回せば、設計から最終製品完成までのプロセスが始まり、安価で時短により、所望の製品を供給可能とするようなビジネス体系をいう。従来,LSIの開発、量産は,半導体の設計・開発から生産・販売までを一貫して行う垂直統合型の半導体メーカー(IDM:integrated device manufacturer)に依頼することが一般的であったが、ターンキーはそれよりもコスト的な優位性を見出したのである。
 ターンキーを請け負った設計業務を中心とする半導体ファブレスメーカー は顧客の企画を基に自社で設計する場合が多く、その後のウェハファンドリ、アセンブリ・テストハウスはその提携メーカーを利用する。
 昨今、プロセスの微細化、高集積化で開発費が高騰しており、近年の韓国、台湾メーカーで苦戦を強いられている国内大手半導体メーカーの中には、ターンキーを利用することによって、合理化とコストダウンを実現させているメーカーも少なくない。また、セットメーカーにおいても、自社でLSIを開発したいが、製品の企画だけに専念して、手っ取り早く、所望のLSIの入手を可能としている。そのようなことから、ターンキービジネスに新規参入 を計画する中小の半導体ファブレスメーカーが増加傾向にあるという。従来は、ターンキーはLSI製品だけの事業形態であったが、最近では太陽電池にも取り入られている。

 そこで、筆者は、国内半導体メーカーのターンキービジネスの現状の市場動向、今後の展望の調査分析を行なった。このような半導体メーカーのターンキー ビジネス扱った書籍の刊行は国内の出版社、調査会社でははじめての試みとなり、半導体業界及び、関連業界から、当市場調査報告書の出版を待ち望まれていたと思われる。
 今後、ターンキー新規参入を計画するかどうか手探り状態である半導体メーカーも少なくないと推測され、当報告書はそれらの指針になりうるだろう。

 最後に、半導体メーカーのターンキー ビジネスの市場動向情報を必要とされる関連業界の方々に参照、活用され、業界の発展に貢献できれば、幸いである。

 2011年11月
 テクニカルコンサルタント 山本貴尋
2011-2012年版 国内半導体メーカーにおけるターンキー市場の現状と展望 Copyright (C) 2012 NTS Inc. All right reserved.