■日時:2024年10月25日(金) 10:30〜15:25
■会場:※会社やご自宅のパソコンで視聴可能な講座です
※ お申込み時に送られるWEBセミナー利用規約・マニュアルを必ず、ご確認ください。
■定員:30名
■受講料:49,500円(税込、テキスト費用を含む)
※複数でのご参加を希望される場合、お申込み追加1名ごとに16,500円が加算となります
■主催:(株)AndTech
■講師:
第1部 九州大学 最先端有機光エレクトロニクス研究センター / センター長・教授
安達 千波矢 氏
第2部 広島大学 自然科学研究支援開発センター / 副センター長・教授
齋藤 健一 氏
第3部 山形大学 有機エレクトロニクスイノベーションセンター / 副センター長・教授
里 善幸 氏
■プログラム:
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第1部 高性能TADF-OLEDを目指した包括的分子設計
【講演主旨】
有機発光ダイオード(OLED)は、30年以上にわたる広範な研究開発を通じて、多くの精巧な新規有
機光エレクトロニクス材料とデバイスアーキテクチャが確立された。現在、OLEDは、デバイスとして
の高性能化のみならず、軽量性と柔軟性を活かして、最先端のスマートフォンや大面積テレビ、さら
には、XR等の新しいディスプレイ用途としても大きな期待が寄せられている。材料科学の観点から、
OLEDにおける新規発光材料の創製は、高い外部EL量子効率(EQE)を目指した研究が中心的な課題で
あった。1990-2000年代における従来の蛍光材料(第1世代)の開発から始まり、室温りん光(2000-)
(第2世代)、熱活性化遅延蛍光(TADF)(2012-)(第3世代)1)と、有機発光体の新たな可能性が次
々と開拓され、高性能なOLED素子だけでなく、有機光化学の発展にも大きな貢献を果たしてきた。近
年、TADF分子設計の無限の可能性から、TADF-OLEDに関する様々な研究が精力的に行われている。さら
に、高効率と狭いスペクトル幅の両立が可能であり、実用的なディスプレイ用途に最適であることから、
ハイパーフルオレッセンス(HF)-OLEDが開発されている。ここでは、ホスト分子、TADF分子、ターミ
ナルエミッター(TE)分子を最適化し、効率的な励起子移動を実現することで、20%以上の高い外部
量子効率(EQE)、高色純度、高輝度が実現している。HP-OLEDの過渡PL特性を解析することにより、
TADF補助ドーパント(TADF-AD)とTE分子間の効率的なFRETの存在が、さらには、過渡EL解析により、
TADF-ADとTE間のEHOMO差が小さいほど、発光層内部での正孔トラッピングを効率的に減少させること
ができ、その結果、効率のロールオフが小さくなり、動作可能なデバイス寿命が長くなることが確認
されている。さらに、有機薄膜における自発配向分極(SOP)が、励起子消光プロセスから逃れるため
の重要な問題であることが最近明らかとなっている。
本講義では、TADFの分子設計から、HF-OLEDにおけるTADFとTEのデバイス設計原理を解説し、高性能
OLEDの設計指針を明らかにする。OLEDにおける電荷移動(CT)現象の重要性について結論的に言及し、
先進的なCT技術5,6)の展望についても言及したい。
参考文献
[1] T. Uoyama, et al., Nature, 492, 234 (2012)
[2] C.-Y. Chan et al., Nature Photonics, 15, 203 (2021)
[3] Y.-T. Lee et al., Advanced Electronic Materials, 7, 2001090 (2021)
[4] M. Tanaka et al., ACS Applied Materials & Interfaces, 12, 50668 (2020)
[5] R. Kabe and C. Adachi, Nature, 550, 384 (2017)
[6] A. S. D. Sandanayaka, et al., App. Phys. Express, 12, 061010 (2019)
【プログラム】
1. TADFの分子設計
2. HF-OLEDにおけるTADFとTEのデバイス設計原理
3. 高性能OLEDの設計指針
4. OLEDにおける電荷移動(CT)現象の重要性
5. 先進的なCT技術の展望
【質疑応答】
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第2部 有機EL用高分子溶液の塗布による配向度の高い配向膜の作製
【講演主旨】
導電性高分子は,主鎖にπ共役構造を持つ電気伝導性の高分子である。導電性高分子は,軽量,フ
レキシブル,溶液プロセスによる成膜という特長から,次世代デバイスの基幹材料として位置付けら
れている。特に,導電性高分子が配向した膜(配向膜)では,異方的な光物性と電荷輸送特性による
機能向上が発現する。従って,配向度の高い配向膜の作製法,配向度とナノ構造の評価法,それぞれ
を簡便に行う手法の開発が求められている。
本講演では,導電性高分子膜の光機能性の向上を目的とした,配向膜の作製法ならびに評価法につ
いて紹介する。具体的には,一般的な導電性高分子の配向法の紹介(乾式,湿式)の他に,演者らが
行った有機薄膜太陽電池用の導電性高分子の配向(ラビング法,文献1,2),セルロースをテンプレー
トにした有機EL用導電性高分子の新規配向法(文献3,7,8),筆で塗る手法による有機EL用導電性高分
子の新規配向法(文献5,6)など,時間の許す限り紹介したい。
参考文献
[1] Enhancement of Out-of-plane Mobility in P3HT Film: Face-on Orientation Produced by
Rubbing,
D. Kajiya, T. Koganezawa, K. Saitow, J. Phys. Chem. C, 119, 7987 (2015).
[2] Enhancement of Out-of-plane Mobilities of Three Poly(3-alkylthiophene)s and
Associated Mechanism,
D. Kajiya, T. Koganezawa, K. Saitow, J. Phys. Chem. C, 120, 23351 (2016)
[3] Uniaxial Orientation of P3HT Film Prepared by Soft Friction Transfer Method,
M. Imanishi, D. Kajiya, T. Koganezawa, K. Saitow, Scientific Reports, 7, 5141 (2017).
[4] Ultrapure Films of Polythiophene Derivatives are Born on a Substrate by Liquid Flow,
D. Kajiya,K. Saitow, ACS Appl. Energy Mater., 1, 6881 (2018).
[5] Brush-printing Creates Polarized Green Fluorescence: 3D Orientation Mapping and
Stochastic Analysis of Conductive Polymer film,
T. Sakata, D. Kajiya, K. Saitow, ACS Appl. Mater. Interfaces, 12, 46598 (2020).
[6] 4D Microspectroscopy Explores Orientation and Aggregations in π-Conjugated Polymer
Films Prepared by Brush Printing,
T. Sakata, K. Saitow, J. Phys. Chem. Lett, 13, 653 (2022).
[7] Cellulose-Templated Stable Foldable Oriented Films with Polarized RGB Luminescence,
M. Takamatsu, T. Sakata, D. Kajiya, K. Saitow, Chem. Mater., 34, 1052 (2022).
[8] Cellulose Templating for π-Conjugated Polymer Orientation: An In Situ Time-Resolved
Spectroscopy Exploration,
T. Sakata, T. Hirota, K. Saitow, ACS Appl. Polym. Mater., 4, 11, 8166 (2022).
【プログラム】
1. 導電性高分子とは
2. 導電性高分子の構造,ナノ構造,機能性
3. 導電性高分子の配向膜とは
4. 配向膜の作製法I(ラビング法,摩擦転写法など)
5. 配向膜の作製法II(筆で塗る手法,セルローステンプレート法など)
6. 配向膜の評価法I(偏光吸収スペクトル,偏光発光スペクトル,偏光ラマンスペクトル,斜入射X線
回折など)
7. 配向膜の評価法II(顕微分光法,mapping法,多次元統計解析法など)
8. 配向膜の評価法III(配向のダイナミクス,in situ測定など)
9. まとめと展望
※わかりやすくするために,上記の順番が入れ替わることもあります。
【質疑応答】
【キーワード】
導電性高分子,共役系高分子,塗布法,溶液プロセス,偏光
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第3部 塗工プロセス(ウェットプロセス)×光緻密化によるウルトラ・ハイバリアの開発
【講演主旨】
有機ELが有する特徴の一つに、「フレキシブル・軽量化」があるが、その達成には外気(水蒸気・
酸素)からの保護を目的としたバリア構造が必要である。フレキシブルOLEDでは、真空成膜法で形成
した無機バリア膜により達成されているが、現在高コストであり、さらなる普及には低コスト化が必
要である。当研究室ではウェットプロセスx光緻密化により真空成膜に迫るバリア性能を達成してい
る。本セミナーでは、バリアの簡単な基礎知識、現在のフレキシブル有機ELの構造と有機ELの劣化を
説明したのちに、当研究室の塗布バリア膜の研究を紹介する。
【プログラム】
1.バリア技術
1-1 バリア性能の指標と
1-2 用途と要求性能
2.OLEDにおけるバリア構造
2-1 水蒸気による劣化
2-2 フレキシブルOLEDディスプレイの構造
2-3 真空プロセス
3.ウェットプロセスによるバリア膜研究
3-1 従来の塗布バリアとその問題点
3-2 当研究室の塗布バリア技術
3-3 水蒸気透過度
4.デバイス上へのバリア構造作製
4-1 デバイス上への作製
4-2 デバイス性能
5.将来展望
【質疑応答】
【キーワード】
フレキシブル有機EL、ウェットプロセス、ウルトラハイバリア、低コスト化
【講演のポイント】
フレキシブル有機ELディスプレイの達成には、緻密な無機膜が必要である。当研究室では、溶解可能
な前駆体を塗布成膜し、光焼成により、真空成膜に迫る緻密化を達成した。本技術は低コスト化と低
炭素プロセスに寄与できる。
【習得できる知識】
フレキシブル有機ELディスプレイの構造
有機ELの劣化
ガスバリア(水蒸気バリア)の基礎知識
真空成膜の現状と課題
塗布バリア技術
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