監訳者のことば
 本書は、Patty's Industrial Hygiene and Toxicology 第4版の翻訳で、原書は全10冊、厚さ50cm、9000頁の大冊であるが、今回の出版は、そのうちの毒性・中毒の部である。原書の特色は第一に、「毒性・中毒」の部だけで6冊、5000頁以上と、他に類を見ない豊富な内容であること、第二に、初版以来、網羅性と詳しさの故に、長年にわたってバイブル的存在とみなされてきたこと、 第三に、今回大幅な増補改訂が行われ、新しい角度からの新しい知見が大量に増えたこと、などである。
 翻訳書としての特色は、第一に、原書の新鮮さを失わないうちにと、翻訳グループを組織し短時日で翻訳を終えたことである。
 第二は、正確さである。原書の誤り、曖昧な点については出版元のWiley社を通じて、著者や専門家に確認したが、その頁数は1000頁、確認個所はその数倍にのぼった。業績が引用されている多数の日本人研究者については、個別に確認し、すべて日本語名で表記した。
 第三は、翻訳にあたって「トキシコロジー用語集」を編纂し、訳者全員の会議を月1回開いて専門用語の統一と正確さを期したことである。用語集は、広い範囲の用語を収録し他分野の用語との整合性を期した。
 第四の特徴は索引である。事項名のほか、物質名は別名を含め、日本語、英語、CAS番号のいずれからでも、検索できる。
 第五は、単なる英文和訳ではなく、読みやすい日本語、を大きな目標の一つとしたことである。
 サリン事件、ヒ素カレー事件やアジ化ナトリウム事件、内分泌撹乱物質と、なじみのない化学物質の脅威が身近にある昨今、正確で、詳しく網羅的、理解しやすい情報源として、出来るだけ多くの人に利用していただきたく、大学、研究所はもちろん、公共図書館などの、必備の参考資料となると信ずる。
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