発刊にあたって
「生物としての人間(ヒト)」を研究対象とする人類学,人間工学,家政学,体育学,看護学,福祉学,心理学,デザイン学など人間科学の研究領域や,住宅,家電品,車両等の製品開発・設計の現場において「ヒト」を知ることは極めて重要なことである。しかし,本当の意味で「ヒト」を知ることは決して容易なことではない。「ヒト」を知るためには様々な観点から多面的にとらえ,「ヒト」の全体像を見ていく必要がある。今まで「ヒト」を多面的にとらえ,詳細に解説した事典は刊行されていなかった。
 本事典は,まず人間科学に関連する重要な中項目257を選定し,それらを「ヒトの遺伝」「カラダの構造」「カラダの機能」「脳と心」「ヒトの感覚」「ヒトと環境」「ヒトの営み」「健康と福祉」「社会と文化」「ヒトを測る」の10章の中で解説したものである。この中で人間科学領域で用いられる重要キーワード約7000語が説明されている。それぞれの解説の中で最新の科学的成果を踏まえ,「ヒト」の機能的特性,構造的特性等を明らかにすると共に,現代社会・文化と「ヒト」の関係についても言及している。また,巻末には重要キーワード,人名などの索引を充実させ,辞書的な使い方もできるようになっている。さらに本事典は冊子体としての出版と共に,電子版の出版も予定されており,新しい活用法が期待できる。こうしたことから製品開発・設計の現場における問題発見・解決型の用途にも十分に対応できるものと思われる。
 本事典は,生理人類学の観点から「ヒト」について多面的に解説したものであり,人類学,人間工学,家政学,体育学,看護学,福祉学,心理学,デザイン学などの人間科学領域の研究者,学生,製品開発・設計者などの専門家のみならず,公共図書館,学校・大学などの教育機関,さらには個人ユーザーなど,多くの方に興味深く読んで戴けるものと確信している。

編集委員長 勝浦 哲夫
 
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