刊行にあたって(一部抜粋)
本書『植物学の百科事典』は植物学のあらゆる分野を包括している点で際立っています。執筆者として知識・経験豊かな学会員はもちろん、最先端の植物科学の研究に取り組む若手研究者の会員がこれに加わり、あらゆる分野の専門家によって執筆されています。

植物学関連の、あったら良いと思いつくほとんどすべての話題・テーマが項目として取り上げられています。そこには植物学の歴史や本草学といった、いわば植物学の始まりを知ることができる項目から、根・茎・葉といった植物のからだに関する基礎的な項目、もっと植物を知るための最先端研究テクノロジーに関する項目、そして、分類・系統学、生態学、生理学、形態・構造、遺伝・分子生物学の研究分野ごとの重要な項目、さらに応用編として農業や社会との関わりにおける植物学の重要項目までカバーされています。遺伝資源や生態系サービスといった、近年、高校教科書でも取り上げられるようになった新しい概念も解説されています。

本書で扱う多様な項目をみると、植物学の専門書の枠を超えた広がりがあることと、教科書・啓蒙書のレベルを超えた最先端研究の情報にも正確な内容とともにアクセスできることがわかります。

植物の専門家はもちろん、日ごろ植物に関心の深い一般の方々にも、あるいは項目によっては高校生が読んでも十分面白いと思ってもらえるのではないでしょうか。本書は植物学の基礎と同時に、新たな研究段階へ進むための高度なレベルの情報を伝えようとしています。若い人たちは、植物学の過去と現在を知り、そして未来への架け橋を見ることができるでしょう。

公益社団法人 日本植物学会会長 戸部 博
 
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