はじめに

 平成13年2月9日の朝日新聞朝刊に「太陽電池生産 日本2年連続世界一」との見出しの記事が掲載された。2000年における日本全体の太陽電池生産量は,前年比46%増の116,700kW(家庭用システム換算で2万9千件分)で,2位の米国(78,500kW)を大きく引き離しつつあり,企業別では99年のトップの座にあった米BPソーラーを抜いて1位シャープ(50,400kW),2位京セラ(42,000kW)との報道である。環意識の高まりや国の補助制度により,住宅用太陽電池の国内需要が伸びてきた背景がある。
 一方,ヨーロッパでは10年前から,原子力発電の相次ぐ事故が契機になって,発電用エネルギー源を原子力エネルギーから順次,再生可能な自然エネルギーにシフトさせる運動が始まっている。ヨーロッパではまた,2030年には化石エネルギーの消費を現在の25%減とする計画があると聞く。言うまでもなく,大気中の二酸化炭素の増加を抑えるため,石炭・石油の使用抑制である。ドイツでは,具体的数値目標として,2030年には自然エネルギーの利用割合を全エネルギー量の12%にする目標を設定している。事実,ドイツではここ10年間に風力発電を600万kWにまで高めたと聞く。
 発電用エネルギー源を,太陽光で代表される再生可能な自然エネルギーに変えるエネルギーシフトは,決して発電コストを下げることのみを目標とするものでない(ドイツにおける風力発電へのエネルギーシフトは電力料金を逆に上昇させている)。エネルギーシフトとは,省資源,省エネルギーヘの努力を伴い,後世により良い地球環境を残すための人知である。
 平成12年10月,光電気化学研究懇談会・光機能材科研究会のお世話で,東京大学の先端科学技術研究センターにおいて「色素増感型太陽電池の歴史と将来展望」と題する講演会が開催され,250人を越す参加者が集い,講演会は成功裡に終了した。本書はそのような高まりの中で企画された。色素増感型太陽電池がエネルギーシフトの一環として産業化されることを願いつつ,本書がその実現に大きく寄与できればと思う次第である。
2001年2月  大阪大学 柳田祥三
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