燃料電池の原理は1839年に、William Robert Grove によって実験的に確認が行われた。1980年代からはカナダのBallard Power Systems が開発していた固体高分子形燃料電池(PEFC)が、内燃エンジンよりもエネルギー効率が高く、有害な排出物がないことで注目され、自動車メーカーが燃料電池自動車(FCV)の開発を始めた。これが端緒となり、内燃エンジンに代わる動力源の探索を始めていた自動車メーカーによって引き起こされた結果であった。
 近年、「アベノミクス」の第3の矢に位置付ける成長戦略として、燃料電池自動車(FCV)の量産を促進させる水素容器規制の抜本的見直しを表明された。また東日本大震災の影響で停電リスクや電力不足への対応手段が必要とされ、エネファームが注目されている。これは2008年6月に燃料電池実用化推進協議会(FCCJ)が家庭用燃料電池の認知向上を推進する取り組みとして名称を「エネファーム」に統一したのが発端である。
 2011年には自動車3社とエネルギー事業者10社から、2015年までにFCVの国内の市場投入、水素スタンド100カ所程度を整備する共同声明が発表された。2015年を普及開始初年度として2025年までにFCV200万台、水素スタンド1,000カ所を実現し、自動車産業の新たな飛躍を目指した取り組みが始まっている。さらに2020年の東京オリンピックでは大会運用に必要となる輸送手段にFCVが活躍することが期待されるなどFCV時代が始まろうとしている。
 本レポートでは自動車燃料として水素を販売するための水素ステーション整備、タイプ別の燃料電池、サプライチェーンに必要な製造、輸送、貯蔵、充填などといった各工程における主要部材・機器など全体像を捉える構成にした。
 燃料電池の部材および水素関連産業の全体像にせまる本レポートが、関連する業界で事業に関わる方々にとって貴重な情報源となることを確信し、ご購読をお勧めする。
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