= 刊行にあたって =

 次世代車の開発をめぐり、自動運転車や電気自動車(EV)、コネクテッドカーなど、車の根幹となる部分にエレクトロニクスが関わるようになってきた。しかもグーグルやアップルなどのIT企業まで自動車業界に参入し、自動車メーカーが持っている技術だけでは、今後の激動の時代を乗り越えることは難しい。自動運転とEVは密接に絡む。全ての制御を半導体、ソフトウェアとモーターによる電動で行うのである。
 現在普及の進んでいる先進運転支援システム(ADAS)の搭載車が増加し、車両情報や外部環境情報など、ドライバーに対する情報量が大容量になる。ドライバーに負担をかけることなく、表示内容に序列をつけ、必要なものから伝えられるように表示機能が求められる。
 運転支援や燃費向上装備などドライバーに対する情報表示量が増加し、車載ディスプレイの需要が拡大している。EVに使用されている最新の燃費向上技術は、走行状態をドライバーに知らせる視覚効果を統合することで、自動車の利用満足度を向上させている。その自動運転車では、運転手と車がやりとりする情報の多様性と複雑性が増大され、必要な情報をタイムリーに提供することができるディスプレイの重要性が高まっている。2016年の車載ディスプレイ市場は9,900万枚であり、2020年には1億4,380万枚規模にまで拡大していく。
 また次世代車として、パワートレインが従来の内燃機関からモーターへと移行する“電動化”が注目を集めている。
 イギリスは、2040年までにガソリン車やディーゼル車の販売を全面的に禁止する。オランダやノルウェーでは2025年以降のディーゼル車やガソリン車の販売禁止を検討する動きがある。ドイツでは2030年までにガソリン車などの販売を禁止する。インドや中国でも類似の政策が打ち出され、一気にEVにシフトして自国の有力産業に育成しようとの思惑が働いている。世界の自動車メーカーはEVへの取り組みを本格化している。自動車業界にとどまらず製造業やエネルギー産業を揺るがす大変革の始まりでもある。
 さらに、次世代車は車体を軽量化するための素材や加工方法などにも影響を及ぼしている。近年、自動車材料はこれまでの鉄鋼に代わってアルミニウムやCFRP(炭素繊維強化プラスチック)が大量に使用され、車体の軽量化が進んできた。自動車用途でのCFRPの採用を見ると、フレームやプロペラシャフトなど従来にはなかった構造部品にまで採用実績が広がっている。一般車種への本格的な採用はこれからであり、普及のカギを握るのは生産コストの低減である。そこで国内メーカー各社は自動車各社と協力して、低コスト化技術の開発にしのぎを削っている。
 本レポートでは、T編「車載ディスプレイ」、U編「リチウムイオン電池・電気自動車」、V編「CFRP(炭素繊維強化プラスチック)・自動車用CFRP」の三部構成にした。次世代車に向けてのビジネス戦略のヒントとして、情報収集の一助となれば幸いである。
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