= 刊行にあたって =

 本書はZEV(ゼロ・エミッション自動車)およびEV用リチウムイオン電池の技術と市場をテーマとして、特に2017年後半の動向を調査し、既刊の「ZEV規制とEV電池テクノロジー」内容を改訂したものである。前書は2017年3月に発刊したが、その後の自動車産業の“EVへのなだれ込み”とも見える変化は、かなり急激なものがある。
 2017年7月、英国政府はガソリン車とディーゼル車の販売を、2040年以降に禁止すると発表。フランス政府も2040年までに国内でガソリンとディーゼル車の販売禁止。9月に中国政府は、ガソリン車禁止の時期を検討していると表明。またドイツ政府も、当面EVとディーゼルの二面作戦をとることを発表している。米国は政権交代後、パリ協定からの離脱は表明したものの、米カリフォルニア州のZEV政策には変化の動きは見られない。この様な状況から、自動車およびリチウムイオン電池とその原材料メーカー各社は、それぞれ開発、生産体制の強化に移行している。
 本書は「ZEV&EV電池テクノロジーU」として、第T編でZEVの政策と環境、第U編EV電池テクノロジーをまとめた。そして近々第V編としてEVの世界レベルでの関連業界の連系等の動向をまとめ紹介する予定である。スマホなどの民生用と違い、自動車は一国の社会とエネルギーインフラの基幹を成している。比較的に高価でも目新しいスマホが売れるのとは事情が異なり、補助金にたよって本体価格を下げても、価格と燃費(電費)が受け入れられなければ、EV需要は長続きしない。これらに関する定量的、数値的な比較と進歩の見通しの検証が、EV需要がホンモノになるか、バブルで消えるかを占う鍵であろう。
 第U編では、2017年段階で発表されているEVとPHV、比較としてHVや燃料電池車FCVの走行諸元データを解析し、EVが何処まで走れるか、一充電走行距離とその電力消費量に重点をおいて比較検討した。
 リチウムイオン電池の生産と供給、その安全性はEV拡大の要である。今日、実績でその技術が確認されている日本メーカーと比べ、欧米、中国メーカーの実力と実態は把握し難い面がある。本書では現在、生産されているリチウムイオン電池に焦点をあてて、EV適性を中心に解析して紹介している。本書がZEV、EVとリチウムイオン電池の業務に関係する方々にお役に立てれば幸いである。
調査・執筆 菅原秀一
企画・編集 シーエムシー・リサーチ
ZEV & EV電池テクノロジーII 2018 書籍+CDセット Copyright (C) 2017 NTS Inc. All right reserved.