= 刊行にあたって =

 我国は一次エネルギーの9割以上を海外に依存している。一方、国内に投入された一次エネルギーの約6割は利用されずに排熱として大気に廃棄される。したがって20兆円に近いエネルギー輸入額の大半が利用されずに捨てられているということになる。再生可能エネルギーを活用し化石燃料の使用量を低減すると共に、未利用エネルギーを可能な限り少なくすることは、地球環境の保全、エネルギーセキュリティーの確保、および円の海外流出の抑制にとって重要な課題である。
 日本のエネルギー需要の約半分を占める産業分野では、近年、エネルギー消費量は低減傾向にある。この理由の一つとして高い省エネ技術が挙げられ、国内の産業界では今まで比較的高温の熱回収や熱利用を進めてきた。近年、中低温の未利用エネルギーの利用技術の開発や実施も進められているが、中低温排熱の利用には経済的な課題もまだ多く、充分とは言えない。
 排熱を出来るだけ発生させない工夫は勿論重要であるが、発生した排熱を如何に有効に利用するかは、まさしく現在の日本にとって最重要課題の一つということができる。
 本書が、国内の排熱の現状と利用方法について認識を深め、上記課題の解決に少しでも役立つことを期待する。
森 豊
熱利用技術の基礎と最新動向 
〜バイナリー発電を中心に〜
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