発刊にあたって

第1部を担当して
 比較的単純な工程であっても、また複雑な工程であっても洗浄は必要な技術です。従来は何かを行なったあとは洗おうということだけで洗浄技術が適用されてきました。最近では、部品や製品の性能に対して表面や界面の機能を無視することができなくなってきました。そこで洗浄技術の重要性が強く指摘されるようになってきました。汚れが何かはわからなくても表面にあるものは何でも除去しようという考えで洗浄が行なわれています。その結果、しばしば過剰な洗浄のために表面が損傷することすらあります。
 効果的で適切な洗浄技術を適用するためには、洗浄技術の本質を理解する必要があります。洗浄技術を、必要とされる表面を再現性よく作る技術であると定義します。そうすると除去する必要のない汚れは洗浄除去する必要もありません。一方、洗浄というのは、表面や界面での事象です。
 このような背景から洗浄を科学的にとらえるためには、表面や界面で起こる現象を理解するための基礎となる界面化学を洗浄技術との関連で知覚しておく必要があるように考えます。このような考えから、洗浄に関係する界面の化学を解説しました。次にこれらのことを利用して汚れが除去されるメカニズムを整理しました。まだまだ良く説明できないことがかなりあります。さらに洗浄技術の高度化には最適な洗浄評価技術が不可欠です。このようなことから現在利用できる評価技術の解説も行ないました。
 ここでの記述で説明できない洗浄に関する現象は多々あると考えられます。このようなことの理解には、ここで記載した以上の理論や実験技術が必要とされます。このためにも本編について十分検討をしていただくことが必要と考えます。御活用を期待いたしております。
角田 光雄
第2部・第3部を担当して
 一口に洗浄といっても対象製品によってどの手法を採るのかでその評価は大きく変わります。そこで、この第2部では、まず基礎編と応用編にわけて、基礎編では化学的洗浄の溶剤洗浄、アルカリ洗浄、乳化洗浄、電解洗浄、超音波洗浄、酸除錆、アルカリ除錆、電解除錆についての基本的な問題と機械的洗浄(ブラスト法)の基本的問題をQ&A方式により解説し、これをベースとして応用編では各種産業分野にて施工されている工業洗浄の実際についてQ&A方式にて出来る限り新しい話題も取り入れて説明を加えました。また、洗浄度の判定方法についても最近の精密洗浄分野にて使用されている各種方法についてQ&A方式にて解説を加えました。
 第3部では、出来る限り読者の要望を満たす意味で洗浄関連の用語の解説については、日本産業洗浄協議会の了承を得て同会の資料を掲げ、表面技術、現場パンフレット、洗浄設計、防錆管理に掲載された洗浄に関する論文をピックアップしてとりまとめました。
 さらに、海外文献(Metal Finishing,Products Finishing etc.)についても洗浄に関する論文をとりまとめ紹介しました。環境規制が益々厳しくなるので最新の環境基準項目と基準値、要環視項目と指針値、土壌汚染に係わる環境基準値についても表を掲載しました。
間宮 富士雄
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