界面活性剤は化学構造上、一分子中に性質の異なる親水基および疎水基
を兼ね備えた両親媒性化合物である。その機能は洗浄、乳化、可溶化、分散、湿潤、柔軟等の多岐に渡るため、広範囲の産業分野で積極的に利用され、重要な産業素材の役割を果たしている。
 最近の界面活性剤の主な動向を概観すると、(1)新機能性界面活性剤に関する技術開発、(2)界面活性剤の新機能の創製に関する技術開発、(3)水溶性高分子/界面活性剤相互作用による機能の向上に関する技術開発、(4)難分解性の界面活性剤の光分解に関する技術開発、(5)界面活性剤の物性評価・可視化技術に関する技術開発、(6)安全性・環境保全性評価に関する技術開発に集約される。
 本書の改訂は界面活性剤と広範囲な産業分野との関連を強調し、製品開発の第一線で活躍中の研究者、技術者、並びに、界面活性剤を専門としない最前線で活躍されている研究者に敬遠されないように、上記に示した各技術開発分野から、興味ある材料について、基礎から最新の話題まで、整えた。
 また、自然界の生物の生命維持に重要な役割を果たしている生理活性物質のほとんどの化学構造は両親媒性化合物であり、化学構造的に、界面活性剤と類似している。界面活性剤の技術開発が、生体関連分野との積極的な「共生」を計ることで新技術、新機能の創製に結びつく事を期待したい。例えば、「乳化技術」は省エネルギータイプの新しい乳化剤、乳化方式が実現しているかもしれない。本書が、界面活性剤の技術開発の一助となれば幸いである。

「はじめに」より……2010年11月 阿部 正彦・堀内 照夫
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