電気化学とは電子の関与する化学と考えることができ、その取り扱っている範囲は生体内での反応から電気エネルギーと化学エネルギーの直接相互変換まで広いものとなっている。学問的には理学、工学の広い分野に関係しており、電子と物質が関与している現象と深い関わりがある。直接関係する産業分野では発電機が発明された直後の水電解、銅の電解精製から始まりアルミニウム電解、食塩電解、表面処理と言った電解工業、ならびに一次電池、二次電池の分野がある。わが国では1970年代のオイルショック後は技術の急速な進歩もあり、電池技術への期待が大きい。
 第5版(藤嶋 昭編集委員長)は2000年に刊行されている。第5版の刊行から10年を経た2009年はじめに電池を中心にした大きな技術進展を受けて改訂版の企画検討が始まった。
 2011年3月に発生した東日本大震災の後、電気化学の重要性は大きく増大している。福島原発の事故により、再生可能エネルギーの利用が進められようとしているが、この偏在、変動するエネルギーに向けてはまずは二次電池が重要な役目を担うと考えられる。さらに水電解で生成する水素も大いに役立つはずである。
 電気化学会80周年記念事業の一環として、編集委員、美浦副編集委員長をはじめとする編集幹事のご努力で素晴らしい便覧ができたと考えている。

 2012年10月 編集委員長 太田健一郎
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