=趣旨=
紙の構造と物性と題したセミナーはここ数年、相当回数実施し、それらに多くの企業人が参加されている。
なんらかの形で紙材料に関与される企業の方が聴講においでになるのだが、紙の補助原料メーカーから文具、包装、印刷、紙搬送等実に幅広い業種にわたっている。
どの方も、紙を専門としないが、紙や製紙についての基礎知識を得たいと考えておられる。現在我々の周囲に身近にある材料は、鉄やアルミ等の金属類、ガラスを主とする無機材料、紙およびプラスチック材料であり、その中で紙は鉄などの金属よりは新しいが、プラスチックよりは格段に古い、約二千年の歴史のある材料である。
ただ蒸気機関に始まるエネルギー革命に追随する形で、近代的な製紙産業になったのは約150年前であり、期を同じくして、地球温暖化が始まったとも言える。
すなわちエネルギー革命および地球温暖化は石炭、石油、天然ガス等の地球に埋没した炭素資源を利用するために生じたのであるが、今後地球温暖化を止めるあるいは遅らせるためには、地球上で循環している炭素資源である木材を上手く利用することが肝要になる。
近代製紙産業が始まる前は非木材の植物から繊維を取り出して紙を製造したのであるが、今は木材から紙が作られ、日本における木材需要の約半分は紙である。
そのため、紙は地球に優しい材料として見直され、今後もなんらかの形で利用され、あるいはむしろその利用が増大する可能性もある。
紙は、かつて情報媒体としての利用が大半であったが、通販の利用が増えたこともあり、最近は包装用途が最も大きい。
さらに紙の多孔性を利用した用途の拡大も考えられる。ここでは紙の主原料であるパルプを含め、紙材料の基礎を幅広く説明するが、とくに我々人間が長年紙を利用するのは、その物性に由来するのであり、さらに紙においてはその構造が物性と不可分なので、紙の構造と物性、その基本と題した次第である。
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