発刊にあたって

 樹木にその語源をもつデンドリティック高分子は,その多分岐構造がさまざまな機能の発現を促し,幅広い応用展開を可能にしている。
 デンドリマーとハイパーブランチポリマーに大別されるデンドリティック高分子は実に興味深い材料であり,またとても美しい構造を持っていることで周知されているにもかかわらず,「どのように使いこなすか」という命題が常につきまとっていることも否めないのが現状である。
 このような状況下,本書は我が国ではじめて総合的にデンドリティック高分子を解説した書籍である。
 まず,第1編では基礎理論としてデンドリティック高分子を特徴づける物理化学的な性質と分子構造について解説した。続く第2編はデンドリマーとハイパーブランチポリマーの合成について,数多くの基本的な事例を紹介している。第3編では光機能,バイオメディカル応用,複合材料などへの応用の現状を中心として詳細に解説した。
 また,現在どのようなデンドリティック高分子が研究開発され,そしてどのような分野に応用されているかを捉えておくために,参考資料として,1,000件を超える最新の特許取得状況についても紹介してある。
 本書は,企業・大学の研究者がデンドリティック高分子とは何か,どうやって合成してどのような応用展開がなされているかを知るための,いわば教科書的な目的を持って企画されたものである。したがって,本書を読めばデンドリティック高分子に関する事例が充分把握できるように,各執筆分担者自身の研究業績のみならず,広くその分野での解説までを執筆するよう心掛けた。
 本書がより多くの研究者,技術者の喚起を促し,デンドリティック高分子の正しい理解と,そして,聳える大樹から多岐に伸びる枝のように幅広い分野への応用展開が拓かれていくことを期待するものである。
10月吉日 青井 啓悟 柿本 雅明
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