刊行にあたって

 UV硬化といわれる技術領域はあまりに広い。基盤技術として、その応用範囲は質、量ともに増加の一途である。その中で、ハイブリッドUV 硬化あるいはデュアルUV 硬化という言葉に触れることがある。本書はこれらを独自の視点から概観し、UV 硬化および材料のさらなる展開に資することを意図している。

 ハイブリッド型とデュアル型に焦点を絞ったUV 硬化について執筆する機会に際して、光エネルギーだけでなく熱エネルギーをも考慮に入れる技術とし、UV 硬化を見直すことを試みた。すなわち、ハイブリッド型は複数の光硬化から、また、デュアル型は光硬化と熱硬化から構成されると定義し、それぞれの典型例を取り上げた。筆者の専門分野の偏りもあって、本書では個々の応用については触れることなく、化学材料についての技術が主体となっている。

 UV 硬化という用語は一見すると簡明だが、実際には、ナノからメートルを越えるサイズからなるさまざまな応用に対応するゆえに、材料や硬化方式の全体像を把握することはとても難しい。しかも、UV 硬化は産業技術なので、これにかかわる研究者、技術者のほとんどは企業人である。そのため、企業研究者による情報発信には多種多様な媒体が使われる。それらの中で特定の情報に接するとき、何かのご縁、との思いを抱くのが正直なところである。学術誌に掲載される関連論文の数も増える一方であり、論文の中身を精査する持ち時間は極めて限定される。その中で、本書のテーマに合致する情報をもれなく収集することは極めて困難だということを告白せざるを得ない。

 ここでは、ハイブリッドUV 硬化は複数の光硬化から成り立つとし、デュアルUV 硬化は光と熱との組み合わせから成ると定義したうえで、目にとまった文献を分類整理することにした。したがって、第7 章と第8 章が本来の趣旨に沿っている。本書の前半はこの2 つの章の準備といった内容であり、2つの章の中で、たびたび引用される。一方、後半の3つの章は、筆者の個人的な関心がベースであり、あまりなじみがない分野かと思うが、デュアルUV 硬化の新しい試みだと位置づけられよう。そこにはUV 硬化技術に熱エネルギーをさりげなく取り込みたいという思いがある。UV 硬化とはいえ、硬化自体は熱的な化学反応を利用しているのだ、という認識があるからである。

 本書の執筆に際し、多数の著書、学術論文、技術報告あるいは講演集などを参考にさせていただいた。できるだけそれらを具体的に引用したいところだが、実際に、引用文献とさせていただいたのはごく一部にすぎない。本書をまとめるうえで参考にさせていただいた多数の文献の著者に敬意を表するとともに、貴重な図や表も含めて引用させていただいた文献の著者ならびに出版社の方々に心から感謝する。
 
ハイブリッド・デュアルUV硬化の実践的活用 〜光硬化の新たな切り口〜 Copyright (C) 2012 NTS Inc. All right reserved.