農業用ビニルの発売により、本邦における施設栽培は飛躍的に発展した。消費者へ周年的に新鮮な園芸作物を届けることが可能となり、食生活にも大きな影響を及ぼしている。近年は、農業用被覆資材は保温目的で低温期のみ展張するのではなく、耐候性が著しく向上し、長期にわたって利用可能となっている。さらには、光や温度などの栽培環境をコントロールするための機能が付加されており、より高度な環境制御を可能とし、省エネ、環境保全、並びに安全な農作物づくりに寄与している。植物工場をはじめ、大規模経営が普及しつつある昨今において、高機能性農業用フィルムの開発・利用はますます注目されていくであろう。

 一方で、原油の高騰による生産コストの増加、海外の低価格農産物との競争、異常気象、地球温暖化、農業従事者の減少など多くの課題がある中で、生産効率を向上し、安定的でかつ安全な農作物を生産するためにも、さらなる光と植物との生理的な関係の解明が進展し、多様な機能を有する農業用フィルムの開発が求められる。

 これまでに施設被覆資材に関する書籍はいくつか出版されているが、その多くは各種フィルムの特性についての記述である。しかし本書は、その特性を作り出しているフィルムの添加剤とその効果、新しい機能性農業用フィルムのメカニズムと施設への利用、植物工場への応用、さらに近年の市場の動向など、産官学が協力して、その道の専門家が様々な面から詳細に解説している。

 本書は、農業被覆資材を現在利用している方や利用を考えている方のみならず、フィルム開発・利用に携わっている企業、研究者の方にもぜひ一読していただき、今後の研究開発、普及の一助となることを期待する。
著者:高知大学 西村安代(2014年8月)

 
国内外の農業用フィルム・被覆資材・園芸施設の技術開発と
機能性・評価、市場および政策動向
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