はじめに

 米国の大学ではティーチング・ポートフォリオが教員の業績評価や採用・昇進時の資料として用いられるケースが多いので、その傾向に拍車がかかっています。そのため、ティーチング・ポートフォリオの中には、授業アンケート結果で点数の高いことが殊更に強調されたり、受講生によるべた褒めのコメントが書かれていたりして、日本人感覚では拒絶感が先に立ち、閉口してしまいます。やはり、自己省察を前面に押し出し、自分自身の教育研究にかける思いを表出させることを意図した、日本版ティーチング・ポートフォリオでなければならないと思います。たとえ、それを昇進・採用時に利用するとしても、教員の教育方針を理解するための一素材として限定的に用いるべきだと思います。
 この本には、ティーチング・ポートフォリオとは何かが詳しく説明され、大阪府立大学工業高等専門学校(2010(平成22)年度末までは「大阪府立工業高等専門学校」)におけるティーチング・ポートフォリオ普及の経験が整理され、ティーチング・ポートフォリオを書く上でのアドバイスも与えられています。何人かのティーチング・ポートフォリオも収録されています。
(「発刊によせて」より)
実践 ティーチング・ポートフォリオ スターターブック
〜実質的な教育改善活動を目指して〜
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