パルスパワーの基礎と産業応用 
 〜環境浄化、殺菌、材料合成、医療、農業、食品、生体、エネルギー〜
= 序 =
 読者の皆様は「パルスパワー」という言葉を聞いて何を想像されるであろうか? 本書の著者の一人である江先生の書物を参考にすると,パルスパワーとは電磁エネルギーの操作に関する学問であり,その歴史は,核融合の関連研究で萌芽期を迎え,高出力レーザーや高エネルギー粒子ビームの関連研究で成長期・成熟期を経過し,現在では材料や環境などの関連研究で進化期を迎えようとしている。基礎を確立した現在,パルスパワー技術は利用分野の普及と浸透のステージにあると考えられる。この技術は,大エネルギーを極短時間でパルス的に印加することから,熱が発生する前に仕事を完結することができる。ごく短時間で電磁エネルギーの臨界場を作り出すことができるため,たとえばエクセルギーの高い電磁波を,エクセルギーの低い熱に変換される前に利用できる。このような高度なエネルギーの利用法は他にはなく,アイディア次第では革新的なプロセス利用を構築できる。一例として,この技術をプラズマに利用した分野では,環境保全,殺菌,乾燥,モノづくり,医療,生物,エネルギー獲得への応用がすでに報告されている。

 本書では,この画期的な高度エネルギー利用プロセスを,さらにさまざま な産業界へ浸透させたいと考え,ユーザー目線でその入門書を担うべく発刊に至った。各章の構成はパルスパワーの基礎に加え,環境浄化,殺菌,材料合成,医療,農業,食品,生体,エネルギー,工学などを取り上げた。また,パルスパワーの専門家である各著者の皆様には,パルスパワーの存在を知らない読者に対しても,その魅力を認識していただくため,方程式を極力使わないようにしていただき,内容をイメージしやすいように図解を中心に解説していただいた。さらに,専門用語も極力使わないようにお願いした。専門とは異なる章だとしても,一通り読んでいただき,新しい研究や新事業のヒントに役立ててもらえることを願っている。

 最後に,パルスパワーの初心者である筆者の呼びかけに,快く応じていただき,短時間で文章を書きあげていただいた全筆者へ謝意を表す。さらに,潟Gヌ・ティー・エスの吉田隆代表取締役,平野英樹様にはご激励をいただき,やっと出版までたどり着きましたことに感謝する。

令和元(2019)年 夏

 上智大学  堀越 智 
 
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