スマートウィンドウの進化と実用化 書籍+CDセット
= 刊行にあたって =
 本書は、スマートウィンドウの基礎と応用について、筆者がこれまでに講義・講演・執筆してきたことを中心にしてまとめたもので、2018年に初版が出版された。

 スマートウィンドウは、電気・光・熱などの外部からの刺激に応じてその光学的特性が変化するクロモジェニック材料を用いるもので、萌芽的研究は約40年前に始まった。当時は、そうしたものを調光窓、あるいは調光ガラスということが多かったが、やがて総称してスマートウィンドウといわれるようになった。著者は偶然ではあるが、そうした先駆的研究開発に当初から携わり、内外の多くの研究者たちと交流し、研究成果について討議する機会を得た。

 本書の構成は、スマートウィンドウとは(1章)、予備知識:光学、電気化学(2章)、各種スマートウィンドウによる調光(3章)、スマートウィンドウの実用化における課題(4章)、まとめと今後の展望(5章)、引用文献(6章)からなる。この分野は学際的なので、物理・化学・数学などの多くの分野の基礎知識を要するが、必ずしも読者の方々がそれらの専門家ではないことも鑑み、なるべく本書1冊で他の専門書を参照しなくてもストーリーを理解できるように配慮した。また、本書で説明した重要な理論や実験結果についてはできるだけ原論文・原典を参照し、文献を明示した。

 初版では詳しく述べることができなかった応答性について、スマートウィンドウの応答性の近似計算−CR直列回路をラプラス変換で解く方法を紹介した。また金属酸化物を多用する系なので時として触媒活性が問題になることもあり、金属酸化物の界面化学や、酸性酸化物や塩基性酸化物について詳論した。

 スマートウィンドウはいまなお成長している分野であり、新たに生まれるバリエーションも多く、ここですべてを紹介することはできない。また、著者の解釈も必ずしも正確ではない箇所もあることを畏れるが、読者の方々のご意見を仰ぎたい。


永井 順一
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