光と物質の量子相互作用ハンドブック
= 刊行にあたって =
 物質中の電子と光(電磁波)との量子的な相互作用、すなわち光と物質の量子相互作用は、 多彩な物性の発現をもたらすとともに、新たな機能を生み出してきた。これにより、 レーザーやLEDなど多くのデバイスが創出され、光エレクトロニクス、フォトニクス、量子光学、 プラズモニクスなど、多くの学術・技術分野が切り拓かれてきた。また、 近年注目を集めている量子コンピューティング、量子通信、量子センシングなどのいわゆる量子技術においても、 量子相互作用が不可欠であり、特に、光と物質の量子相互作用の制御が重要な役割を果たすことは言うまでもない。

 光と物質の量子相互作用については、すでに多くの教科書や解説書で取り上げられている。 しかし、内容が多岐にわたるため、物理の基礎から応用まで、体系的かつ包括的に網羅した書籍は必ずしも多くない。 これらの状況に鑑み、今般、研究者や技術者および大学院生などを対象に、 基礎事項から最新の研究成果やトピックスを盛り込んだ専門書として、「光と物質の量子相互作用ハンドブック」 を編纂することとした。

 本書は、6編68章で構成され、900ページを超える体系的かつ網羅的なハンドブックとなっている。 前半の3編では、光と物質の量子相互作用について、量子力学の一般的基礎事項から始まり、 光と物質の量子相互作用の基礎、各物質・構造に特有な基礎について論じている。これらを踏まえて、 第4編では量子相互作用を用いたデバイスについて、第5編ではシステムへの応用について、さらに、 最後に第6編では計測・分光技術としてまとめている。各章は、それぞれの分野で著名な研究者に執筆を担当いただいた。

 本書は、いわゆる事典とは一線を画しており、一定の完結性を有し、それぞれ読み応えのある内容となっている。 基礎を学ぶ学部・大学院生のみならず、すでにこの分野に精通している研究者・技術者の方々にも、 光と物質の量子相互作用の分野について、基礎から応用・展開まであらためて整理し概観するために、 本書全体をぜひ一読いただくことを願っている。本書が、量子関連分野の研究者・技術者の研究のさらなる発展に貢献するとともに, 分野外の諸氏にとっても、光と物質の量子相互作用に関心を持ったときにすぐに参照できるハンドブックとなることを期待する。

 最後に、本書の構成の議論、各章の執筆者の選定、および閲読等にご尽力いただいた編集委員会の皆様、 お忙しい中執筆いただいた著者の皆様、(株)エヌ・ティー・エスの吉田隆社長や編集業務担当の西山智佳子氏、 および関係各位に厚く御礼申し上げる。



2023年2月
監修者  荒川 泰彦(東京大学)
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