6G/7Gのキーデバイス
= 刊行にあたって =
 現在、第5世代移動通信システム(5G)の普及が始まった段階であるが、すでに、その次の世代の、第6世代移動通信システム(6G)に向けた動きが本格化している。その先の第7世代移動通信システムを指す7Gという文字も目にするようになった。5Gまでは、いわゆる携帯電話をどこでも使えるようにするための移動通信システムの発展がなされてきており、今や世界中どこでも動画の視聴やテレビ会議ができるようになってきた。移動通信は電波利用のルール上は陸上移動通信(LMS: Land Mobile Services)の一つとして位置づけられているが、6Gや7Gでは陸上の枠を超え、また、携帯電話だけでなく、地球上、さらには宇宙にまで広がる人間の活動範囲すべてをカバーするネットワークの実現が期待されている。6G/7Gでは、従来の電波による無線通信と光によるファイバ通信を分けて考えるのではなく、あらゆる伝送媒体を統合して理解し、活用していくことが必要になる。5Gではこれまでの電波帯域に加えて、ミリ波が利用されていることが注目を集めているが、6Gではさらに高い周波数帯域の電波であるテラヘルツ帯の活用が期待されている。

 本書は、6G/7Gで重要な役割を果たすことが期待されるキーデバイス、要素技術について概観することを目的としている。システムコンセプトからデバイス技術、信号処理技術、伝送技術など、各分野の第一線で活躍の専門家に各節を執筆いただいた。6G/7Gはハードウエア的な視点では、光無線融合とテラヘルツ通信によって特徴づけられると考えている。第1章では光無線融合システムの動向やシステムコンセプト、そこで必要となる信号処理などを解説する。第2章は光無線融合を支える電子デバイス、光デバイスの概要や動向をカバーする。第3章ではテラヘルツ波無線通信に関して、化合物半導体による高速電子デバイス、テラヘルツ波帯伝送システムの実証例や、将来的にテラヘルツ波帯への適用が期待されるメタサーフェスまで、幅広い技術分野について、最新動向や今後の展望についてとりまとめた。

 6G/7G実現に向けた道のりは長く、技術課題も山積している。本書は、6G/7Gで必要となる技術のすべてを網羅しているとはまではいえないが、少なくともハードウエア視点では現時点で最も包括的な情報を提供するプラットフォームとなり得たと自負している。本書が、本当の意味で地球を一つにつなぐ6G/7Gネットワークの実現の一助になれば幸いである。

(川西 哲也「はじめに」)
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