刊行にあたって

仮に10 年後の2025 年に2015 年を振り返って見たら「燃料電池自動車/FCV が本格的に登場し、街にEV が目に付く様になった・・・。あれから10 年、FCV とEV が交通インフラとしてあたりまえになり、水素エネルギーシステムが多くの問題を解決し、原発やCO2問題で不毛(無益な)な論議をした」と、ずいぶん昔に思えるだろうか・・・。
さて10 年後は想像としても、2015 年がFCV やEV そしてその技術としての、燃料電池と高性能リチウムイオン電池にとって、大きな転機の年であることは、共通した認識であろう。一方で、FCV、EV、PHV とHV と並べて見ると、“判った”ようで“解らない”多くの「肝心」がある。燃料電池もリチウムイオン電池も太陽電池も、細かいことはともかく、「電池」でいいではないか、今さら聞くのも気が引ける。
では肝心の自動車の走行コスト=燃費はどのように比較したらよいのか。ガソリンなら話が分かるが、EV の充電電力や燃料電池の水素は、燃費(km/L ガソリン)と比較のしようがないではないか。
本書の主題は、上記問題の理解と比較の困難さを解決するために、電池を二つのカテゴリー、燃料電池を発電デバイス、二次電池を蓄電デバイスに区分し、走行コスト(=燃費)を円/(走行km)に統一し、電気(kWh)、水素(kg)、ガソリン(L)との換算・試算の上で比較・検討を試みた。
FCV もEV とも技術的、商品的にも発展途上にある。現在のデバイスの特性やコストはかなり暫定的であり、自動車としての完成度ではハイブリッドHV には追いついていない。どこまで開発が進めば良いのか、その目標は実現可能か、などは関係者の注目の的である。種々の仮定を含む試算ではあるが、可能なかぎり定量的なアプローチを試みている。
水素エネルギーシステムと燃料電池の動作特性、最近のリチウムイオン電池(セル)のエネルギー特性とパワー特性、製品規格、安全性と3R(リサイクルほか)の問題も取り上げ、総合的な技術情報を提供する。
燃料電池自動車(FCV)とEV車のエネルギーコスト分析 PDF版 Copyright (C) 2015 NTS Inc. All right reserved.