EVワールドII 元素資源・正負極材料と電池生産のマッチング
= 刊行にあたって =

 本書は2019年1月に刊行した「EVワールド(米・中・韓・欧・日)総覧」の改定版である。左記の内容は、概ね2018年後半までの諸データを基礎にした。それから現在まで、EVに関する状況の変化はめまぐるしいものがある。本書は可能な限り、新しい数値データを元に、試算と解析を進めるとのスタンスであり、「EVワールドU」として改定を行った。改定では、元素資源、正・負極材と電池生産のマッチングにポイントを置き、EVと電池生産それ自体や、大量の廃電池のリサイクル等の問題は、後に刊行予定の「EVワールドV」に分割した。

 全世界のEV等の生産は、2018年実績で200万台を越えた。その中で車種の多様化、電池容量kWhの大型化と小型化が同時に進行している。ほんの2〜3年前の、単純生産拡大と大型化のトレンドとは決別して、自動車としての本来の姿を目指しているようにも見える。その中で需要の約半分を占める中国市場は、相変わらず世界の動向を左右している。

 EV生産の政策目標と実績の乖離は、中国に限らず欧米にも多く見られる。この背景には原材料である正・負極材の元素資源(Co、Li等)の制約と電池コストへの懸念や、資源獲得競争の激化がある。ここ数年の世界的なEVシフト自体も、行く先の制約条件を見ないで進行した様相があり、目標に元素資源の使用可能量や、資源リサイクルの量などの整合性が求められる。

 本書の仮定ではEVが2030年で1000万台レベルにならないと、設備産業である化学原料の供給は安定しない。電池の市場規模が、EVだけで10〜20兆円となることが一つの目処であろう。しかしながら現状はEVの発火事故の再発や充電インフラの不備で、足止めをされている状況である。この段階での電池総量GWhの試算を行い、そのマグニチュードを示した。

 本書後半で扱った正・負極材と元素資源の所要量の推算は、自動車や電池の業界ではあまり関心がなく、情報も整理されていないように思われる。本書では主題を解析して行く中で、敢えて化学量論的な内容にも踏み込んだが、定量的な出入“マッチング”を無視しては産業は成り立たない。そのため単位や大きな数字の扱いなど、難解な内容も一部含まれているがご容赦願いたい。

 本書は化学と元素資源に寄った内容になっているが、異業種が連なるEVにおいては、むしろ出口側の自動車産業の方にも、入り口側の情報を参考にして頂ければ幸いである。(2019年9月)
調査・執筆:菅原秀一/企画・編集:シーエムシー・リサーチ
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