EV用リチウムイオン電池と原材料・部材のサプライチェーン【書籍+PDF版】
 〜電池のGWh総量と元素資源の供給バランスと諸課題〜
= 趣旨 =

 「サプライ・チェーンSC」さて何だろう。2年越しのコロナ禍で、出口の見えない世相の中で、またしても無理難題が起こったか。確かに、ほんの2,3年目前までは、半導体の供給不安で、それが自動車の生産を停めるなんて、思いもよらなかった。有名なトヨタ自動車の「カンバン方式」が有るではないか、サプライ・チェーンなんて考えて、自社で部品の在庫を抱えるなんて、不合理極まりない。

 半導体のサプライ・チェーンは、大手セミコンの工場火災が発端であった。それがリチウムイオン電池の、電気自動車EVのリチウムイオン電池と、その原材料のSCまで飛び火しようとは思わなかった。しかしこれは単に飛び火ではなく、潜在的にあった諸問題が顕在化しただけの、起こるべくしておこった結果ではなかろうか。
 本書の主題は決して、“サプライ・チェーン禍“ではなく、元素資源>電池材料、特に正極材>電池製造>EVなど電動車両の製造、とのシーケンス(流れ)を定量的に、数字で追って行く作業である。欧米を中心に、2035年を目処に、ガソリン車の販売停止とEVシフトは、脱炭素(カーボンニュートラル)の主要課題でもある。EV生産を年間1,000万台にするために、正極材の前駆体である硫酸ニッケルはどれだけ必要か...。かなり理詰めの計算が必要である。電池の総量○△GWhは○△000,000,000Wh(ゼロが9ヶ)である。

 正・負極材など9種類の化学系原材料、6種類の樹脂・金属材料から構成されるリチウムイオン電池は、SCが多くの業種にわたって細分化されている、数年かけてニッケル鉱山を掘らなければ増産が出来ない、ハイニッケル系の三元系正極材もあれば、従来のプラスチック包装材の拡大で、短時間に増産可能なセパレータの例もある。

 試算の基礎となる統計データが、十分に整備されていない産業分野だけに、精度の高い推算が出来難い面もあるが、可能な限り“マグニチュード”は間違わずに把握したい。実際の“震度”が4か5かは、個々の製品の競争力やコストに現れてくるであろう。

 筆者の力量が及ばない点も多いが、関係業界の参考なることを念頭に執筆したい。(菅原 秀一)。
EV用リチウムイオン電池と原材料・部材のサプライチェーン
【書籍+PDF版】 
〜電池のGWh総量と元素資源の供給バランスと諸課題〜
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