素材系製造業の排熱回収技術と脱炭素化
= 刊行にあたって =

 2025年2月に第7次エネルギー基本計画が閣議決定された。この中の「V.2040年に向けた政策の方向性、2.需要側の省エネルギー・非化石転換(1)基本的考え方」の箇所では、「今後、2050年カーボンニュートラルに向けて更に排出削減対策を進めていく上では、需要サイドの取組として、徹底した省エネルギーに加え、電化や非化石転換が占める割合が今まで以上に大きくなると考えられる。」と述べられている。つまり現在の産業界の潮流は電化や非化石転換であるにしても、まずは省エネルギーが重要であり、エネルギー効率の改善が必要ということである。

 産業分野のエネルギー消費は、近年、低下傾向にあるものの、国内のエネルギー消費全体の約4割を占めている。またその中でも鉄鋼、化学、セメント、ガラス、紙パルプ、非鉄金属、プラスチック・ゴム、繊維、耐火物などの素材系製造業のエネルギー消費量は国内の全製造業の約8割を占め、そこから排出される排熱や温室効果ガスの量は全体の1/3程度に達すると想定される。

 産業分野の中でも、特に素材系製造業においてカーボンニュートラルのための脱炭素化には、@ 製造プロセスに投入するエネルギーの脱炭素化、次にA 製造プロセス段階での脱炭素化、そして最後にB 製造プロセスから排出される排出物の脱炭素化や有効利用があると考えられる。@については再生可能エネルギーの利用や水素利用など、課題はあるが方法は比較的明確である。Aについては一例として水素還元等がある。Bについては、製造プロセスから排出されるCO2や排熱の利用が挙げられる。特に排熱利用はエネルギー効率を高めることができるため、省エネルギーへの寄与の点では効果が大きいが、どちらかというとバックヤードのため、最近は積極的な取り組みがされていないように感じる。

 最近、多くの企業が脱炭素化に向けて舵を切り始めている。その理由は、脱炭素化が企業価値の一つとなりつつあることや、また競合他社に対する優位性につながるなど、社会環境の変化によるものと考えられる。しかしながら、Bによるエネルギー効率の改善は、結局、脱炭素化を図りつつエネルギー消費量の低減や製造プロセスの中の無駄の排除につながることから、経営改善に結びつく実効性のあるものである。

 本書は、@Aの方法と共に特にBに視点をあて、主に排熱の利用技術、利用例などを纏めたものである。本書が素材系製造業の省エネルギーと脱炭素化の一助となることを期待している。

2025年11月 森 豊
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