発刊にあたって

 昨今,化石資源の枯渇,地球温暖化の問題が危惧されている状況のなかで,持続可能社会の構築に向けた再生可能エネルギーへの取り組みが注目されている。
 ただ,再生可能エネルギーは,環境には優しいがコスト高であるという認識がいまだに根強い。しかし,世界の潮流は,再生可能エネルギーによる発電事業がビジネスとして成立するという段階に入りつつある。COP21 において宣言されたパリ協定と今後加速するであろうカーボンプライシング(炭素排出権取引や炭素税)は,再生可能エネルギーの経済合理性をよりいっそう高めることになるだろう。日本における原子力発電所の再稼働や大型石炭火力発電の開発といった議論とは裏腹に,世界規模の再生可能エネルギーへのシフトは加速しており,中長期的には日本もその流れにあらがうことはできない。
 実際に再生可能エネルギー発電事業を行う場合,根幹となる制度である固定価格買取制度の理解が当然必要であるが,それだけでなく,土地利用規制や環境規制など,さまざまな関連法規についての知見が必要である。また,現実に事業に投資し運用していくためには,事業計画の立案や資金調達,メンテナンスを含む事業運営など,さまざまな実務的なノウハウも必要である。
 そこで,本書では,再生可能エネルギーを巡る関連法規について,実際の制度設計者である省庁担当者の方々の知見をお借りしながら整理した。また,業界団体や事業主体や実務家の方々に執筆に参加していただき実務的な重要ポイントについても紹介している。さらに,この分野の一線級の学者の方々には,その専門性を活かしてそれぞれ深掘りした議論を展開していただいた。
 多くの専門家の執筆陣にご尽力いただき本書を完成することができたことは,望外の喜びであり,ご執筆,ご協力いただいた方々に心よりお礼申し上げたい。
 本書は,再生可能エネルギー分野に携わっている方,技術者,研究者,自治体はもとより,法整備,資金ファイナンス関連から今後この分野に参入される方にとって必携の書である。
 また,本書の企画から出版に至るまで,編集幹事諸氏には多大なご協力とご尽力を賜ったことに謝意を申し上げたい。株式会社エヌ・ティー・エス代表取締役吉田隆氏と編集プロダクションオフィスMA の蘆田真澄氏の熱意とご尽力により出版にこぎつけられたことにも併せて感謝申し上げたい。
2016 年3 月吉日
編者を代表して
水上貴央
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