高機能な酸化チタン光触媒 〜環境浄化・材料開発から規格化・標準化まで〜
発刊にあたって

 持続可能な環境に優しいクリーンなエネルギーの安定した供給と、環境に負荷を与えない環境調和型の化学技術の確立とその応用は、21世紀においての最も重要でチャレンジングな課題である。地球上で利用できる環境に優しいクリーンなエネルギー源の中で、地球に降り注ぐ太陽光エネルギーの大きさには圧倒される。このクリーンで無尽蔵の太陽光エネルギーのごく一部分でも利用することのできる革新的な太陽光化学プロセス(ソーラケミストリー)が実現できれば、環境汚染問題のみでなくエネルギー問題の解決に大きく寄与することは疑いない。このような大きな期待の一翼を担っているのが酸化チタン光触媒である。
 このような背景の中、「高機能光触媒創製と応用技術研究会」では、酸化チタン光触媒の優れた光触媒機能に注目し、その光機能のさらなる効率化と環境調和型触媒として環境浄化への応用展開を目指し、意見交換と勉強会、講演会や見学会を開催し多くの知識と技術の蓄積を行ってきた。今回、これまでの膨大な情報を本にまとめ出版することで、光触媒の研究や実用開発研究に携わっておられる多くの方々に何らかのお役に立てればとの会員の強い要望を受け、本書を刊行することになった。
 かかる観点から、本書では、酸化チタン光触媒の作用機構の初歩原理から、高機能な酸化チタン光触媒の創製技術、酸化チタン光触媒の種々の応用展開への具体例、大規模な実用化が期待できる可視光を吸収し機能する可視光応答型第二世代の新規な酸化チタン光触媒の開発研究における最新動向、さらには日本が先導して進めている光触媒の規格化・標準化への動きまでを平易に解説している。本書が、今後の酸化チタン光触媒の地球規模での大規模な実用化展開に貴重な指針と重要な役割を果たすものと期待したい。
「高機能光触媒創製と応用技術研究会」 会長 安保正一 <大阪府立大学大学院工学研究科 教授>
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