発刊にあたって

 界面活性剤は一分子の中に親水基と疎水基の性質の異なる構造要素を兼ね備えた両親媒性化合物である。この界面活性剤は界面に吸着すること、また水(または有機)溶媒中で、自己組織化するユニークな特長を持っている。そしてこれらの特徴は乳化、分散、可溶化、洗浄、湿潤、起泡、カプセル能等の作用の発現に関与するので、洗剤をはじめ、化粧品、医薬品、食品、農薬、塗料、土木、エネルギー(配管抵抗減少剤、燃料)等のあらゆる産業分野の製品に深く関わっている。界面活性剤は広範囲な産業分野で積極的に使用され、独自の固有技術として、育成されてきた。しかし、異種産業分野間での横断的な“界面活性剤利用技術”としての交流は少ないように思える。また、これまでこの様な視点から界面活性剤の利用技術を取り扱った技術・解説書も少ない。
 本書は技術開発並びに製品開発に向け、異分野の視点からの“技術コンセプトの構築”を支援するため、各分野の第一線で活躍中の研究者、技術者の方々に、界面活性剤の理論的な取り扱いよりはむしろ実用面での原理・応用に主眼をおき、最新の研究・開発の知見、今後の展望についてご執筆いただいた。また界面化学を専門としない最前線での技術者にとっても有力な指針が得られるように配慮した。
神奈川大学工学部化学教室 堀内 照夫
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