はじめに

 化粧品は人類の誕生とほぼ同時に生まれたと言われている。当初,神官などが宗教的な意味合いで使っていたとされるが,ギリシャ時代には身支度から衛生,病気の予防を意味する『美容術』(コスメティケ・テクネ)とうわべを飾る『化粧術』(コモティケ・テクネ)が明確に使い分けられ,ケア領域とメーキャップ領域の大きな流れが形成された。それ以降,化粧品はスキンケアやヘアケアなどのケア領域と美しく演出するメーキャップ領域の両方の機能を活かしながら,美しくする目的で多くの人たちに使われるようになった。
 このように社会生活に必要な化粧品ではあるが,それを専門に教えている学校・学科が少ないことや,化学,物理,物理化学,薬学,生理学,色彩学,心理学などの種々の学問分野や科学技術が統合された領域であることから,一般的にはその内容が余り知られていない。
本書は2002年10月に出版された「化粧品の機能創製・素材開発・応用技術」を改訂し,それ以降の最新技術情報と,実際に化粧品を開発する上で必須となる法規制と安全性を付け加えた。このことにより,最近の技術動向のみならず最近の法規制や安全性に関する考え方も分かり, 実際の開発に役立つ構成となっている。具体的には,基剤に関する技術を中心とした基礎編, スキンケア,メーキャップ,ヘアケア,ボディケア,フレグランスなどの美類別の技術開発動向を応用編,2006年のIFSCCで発表された研究を含め2002年以後の最新技術を中心とした最新技術編,法規制と安全性を中心とした実用編に分けて構成した。
 現在,多くの国や地域で高度高齢化社会が急激に進行しているが,「いつまでも美しくありたい」,「健やかでありたい」ということは誰もが願う永遠のテーマである。こういった人類の共通の願いに応えるもののひとつが化粧品であり,化粧品の社会的役割や意義は極めて大きく,「クオリティオブライフ」のひとつとして,その必要性はこれからもますます大きくなってくると考えられる。本書が化粧品技術者のみならず,関連商品の開発に関与される方々に役に立つものと確信している。
 本書の企画に賛同され貴重な技術内容を公表された執筆者諸氏に敬意を表したい。
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