発刊にあたって
一般に固体や液体は圧縮しても気体のように圧密されない。また、液体や気体は水位差や圧力差があれば容易に流れるが固体は流動しない。しかし、固体を粉粒体にすれば、容器に入れてピストンなどで圧縮力を加えると固体なのに気体のように圧縮されてみかけの体積が減少する。個々の固体粒子はほとんど圧縮されないにもかかわらず、圧縮力を加えると粒子配列が変化し、粒子間に他の粒子が侵入して粒子間の空間が減少するためである。また、粉粒体層を傾けると固体なのに液体のようにサラサラと流れ落ちる。これは粒子が回転したり滑ったりしてあたかも分子のように自由に運動できるためである。このように粉粒体は固体なのに充填圧縮性や流動性などの独特の性質を持つが、これら粉粒体の特性は液体や固体、気体とも異なり、十分に解明されたとは言えないのが現状である。
 しかし、粉粒体は固体なのに充填圧縮性や流動性を持つために様々な工業用原料、中間製品、最終製品として取り扱われている。また、これらの性質をうまく利用して型に粉粒体を充填して圧縮成型し、さらに焼結などの操作によって固めて切削や研磨などの機械的な加工を経ずに製品を効率的に作ることができるので粉粒体は各種工業で幅広く取り扱われている。
 したがって粉粒体を取り扱う必要性が生じるが、その性質が十分に解明されておらず、また、粉粒体工学を系統的に学んだ技術者もたいへん少ないので現場の経験や勘に頼って設計・操作しているのが現状であろう。このようにいろいろと悩みながら粉粒体の取り扱いに悪戦苦闘している技術者に少しでもお役に立つようにと粉粒体の基礎物性である粒子径分布や粒子形状の表し方を解説し、特に重要な粉粒体操作である充填性と流動性に対して粒子径分布や粒子形状、さらには粒子表面状態がどのように影響するのを理論、モデル、実験結果などから明らかにしたのがこの本である。この本が粉粒体を取り扱う技術者の悩みに対して少しでもお役にたつことを心から願う次第である。

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