発刊にあたって
 この解説書は、学問体系として、生物学的には微生物制御と、工学的には材料工学とに該当し、それらの境界領域の知識と経験を解り易く解説するものである。抗菌・抗カビ・抗ウイルス剤について説明するに際して、まず細菌・真菌(カビ)・ウイルスに関する基礎知識を理解して頂こうと考えている。微生物制御を説明する前に微生物学のイントロ/入門部分の説明から始めるのは、敵を落とすには敵を知る必要があるとの考え方である。微生物はそれぞれ性質があるので、その裏をかけば生育を損なわせることができる。 <中略>
 抗菌剤は従来、農薬関連、医療用薬剤として専門家(農水省、厚労省管掌)に利用されてきた。上述の現象を防止するためには、微生物の専門家だけが熟知するだけではなく、抗菌処理を行う技術者はもちろんのこと、抗菌製品の発売を企画する人、抗菌製品を取り扱う流通に携わる人など、社会的にも抗菌に対する知識を持つことが要求されている。
 一般製品に当たり前のように応用されている抗菌処理(経産省関連)に対し、2000年には経産省主導で抗菌のガイドラインが発表されている。その中で、我々の生活に清潔性が必要なものにのみ抗菌処理を適用させ、消費者に抗菌製品の適切な使用方法を表示すると共に、安心して抗菌製品を選択するための情報開示を製造業者に義務付けている。
 本書では、清潔性を演出するために必要な加工処理方法や、化学的薬剤を用いず対象微生物の性質を逆手に取った物理的な除菌技術の導入についても幅広く説明する。  <「はじめに」より>
抗菌剤・抗カビ剤・抗ウイルス剤の基礎と応用 
〜種類、特徴、選び方、使い方、性能評価、表示方法〜
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