カーボンブラックの歴史は非常に古く、紀元前より“すす”として文字を書くために使用されていたと言われている。1910 年代から自動車タイヤに使用され始め、その結果、タイヤの耐久性は3〜4 倍程度上がったと推定されている1)。1940 年代、先進国による自動車の急速な普及に応じるべく、米国Philips 社によるオイルファーネス法を用いたカーボンブラックの大量生産が始まり、工業用として広く普及するようになった。
 Wikipedia には、カーボンブラックは、「工業的に品質制御して製造される直径3-500nm 程度の炭素の微粒子」と記載されている。カーボンブラックは、粒子径から言えば、昨今様々な最先端分野で応用されている“ナノ素材”として分類されるべきであり、この素材が紀元前より使用されていたことは非常に興味深い。そのため筆者は、“カーボンブラック”のことを、愛着を込めて“古くからある最先端素材”と言い続けている。
 本稿では、カーボンブラックの構造、種類、製法に関する全般的な内容について述べる。詳細はその他の章を参照されたい。

第1章総論より
カーボンブラックを上手に使用する処方箋
〜種類、製法、用途から最先端技術まで〜
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