推薦の言葉

 資源に乏しいわが国は世界中からさまざまな資源を輸入し、これらを加工・製品化し、輸出することによって繁栄してきた。
 しかし、その繁栄の見返りに大量の廃棄物が排出されることとなった。また、国土が狭いわが国は、最終処分場の確保がきわめて困難であり、このためリサイクルや焼却処理等の推進により埋立廃棄物の量を少なくする努力をしてきた。しかし、廃棄物問題は次第に社会問題化し、廃棄物の出ないリサイクル社会の構築の気運が高まってきた。特に、この数年、廃棄物処理法の改正をはじめとして、最近では容器包装リサイクル法の制定などわが国の廃棄物処理の方向は大きな転換期を迎えている。
 このようななかで、このたび、福岡大学の花嶋教授をはじめとするグループにより、ドイツの廃棄物ハンドブックともいうべき「Abfallwirtshaft」が完訳された。
 ドイツはデュアルシステムにみられるように廃棄物問題への取組みを積極的に行っており、技術基準では1991年の特別廃棄物技術指針(T.A Abfa11)と1993年の一般廃棄物技術指針(T.A Siedlungsabfall)は、厳しい処理基準として世界の注目を集めている。
 その特徴をここに記すと、
・ドイツの廃棄物処理の歴史、環境政策、法律の基礎が示されている。
・ドイツの廃棄物の定義、排出量、組成およびその変動要因について示されている。
・廃棄物の収集、輸送、有価物の回収方法が廃棄物の種類別に紹介されている。
・廃棄物の焼却、破砕、選別、コンポスト、最終処分等の処理処分技術が最新技術を交え紹介されている。
・リサイクルされた製品の商品化について、その要件が述べられている。
・廃棄物の回避について、種類別にその方法が具体的に紹介されている。
・わが国においても、最近問題化している土壌汚染とその修複技術について紹介されている。
・将来の廃棄物処理のコンセプトについて述べられている。

 このような廃棄物全般にわたって興味深い事例を多く盛り込んだハンドブックは、ドイツと日本の国情の違いを差し引いても大変有益であり、廃棄物を勉強する学生はもちろん、企業や研究者あるいは行政の方々にとっても良い参考書となるであろう。
1996年4月  厚生省生活衛生局水道環境部長 坂本 弘道
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