監訳にあたって

 21世紀を間近に控え、地球環境の保全を求める気運がますます高まっている。我々人類は科学技術の急速な進歩により石油、石炭をはじめとする天然資源を大量に投入して様々な製品を生産し、その製品を大量消費することにより、大量の廃棄物が発生し様々な公害を生ずるに至った。さらに人口の増加による食料確保のため大規模な森林伐採による農地の確保や生活廃棄物の増加により地球環境への負荷を高めている。この結果、天然資源の枯渇や温室効果ガスによる地球温暖化あるいはダイオキシン類を始めとする環境ホルモン問題などが顕在化し、地球環境の保全は人類にとって緊急かつ最大の課題となっている。
 わが国においても1991年、再生資源の利用促進に関する法律、環境基本法、廃棄物の処理及び清掃に関する法律の改正、或いは容器包装リサイクル法等々、リサイクル社会の構築により地球環境の保全を図ろうとする試みがなされている。このような状況の中でドイツの氏が執筆した“Integrated Pollution Control“は天然資源保護のために産業界が取り組まなければならない様々な汚染対策技術について分かり易くまとめられている。本書は10章で構成され、第1章では技術の基本として現在の環境問題、環境保護、技術的基本などについてまとめてあり、技術や生態系とは何かについて論理的に説明している。第2章以下はエネルギー、大気、水、土壌、廃棄物等の制御技術について記述してある。原著のタイトルを直訳すれば「総合汚染制御」であるが第1章で著者は汚染制御技術を「材料利用システムは自然資源保護に結びつけたものであり、水、大気、土壌、原料といった形ある構成要素だけでなく全体的な生存環境といった価値を含むものである。」と定義づけていることより日本語版においては「地球環境保全ガイドブック―生産プロセスにおけるグリーンテクノロジー」とした。本書は、環境保全技術について分かり易く、かつ体系的にまとめられており生産活動や環境保全に関わる、技術者、研究者、学生の方々に活用して頂ければ幸いである。
1999.11月  樋口壯太郎
発刊にあたって

 本書「地球環境保全ガイドブック―生産プロセスにおけるグリーンテクノロジー」は,ヒトおよび自然環境中での汚染物質の広がりを制御する方法の開発とその最適化について記述したものである。総合的な手法は,長期にわたる生態学的方針,物質方針,エネルギー方針への汚染制御技術の組込みおよび分解,変換,分散の各プロセスについての現在の知識への汚染制御技術の組込みから成る。言い換えれば,“大きな絵を眺める”ことである。このことは第1〜4章において基本的なレベルで検討を加えたが,各章題は,第1章「基本」,第2章「民間分野における汚染制御技術」,第3章「汚染物質」,第4章「エネルギーと気候」,である。また,第5〜10章において媒体特有のレベルで検討を行い,各章題は,第5章「大気汚染制御」,第6章「水質汚濁―廃水」,第7章「飲料水」,第8章「土壌」,第9章「廃棄物」,第10章「リサイクル」,である。こうした伝統的な章の配置は,この本を環境工学の全体的な学問のための参考図書としてだけでなく,教科書としても利用しやすくしている。
 「地球環境保全ガイドブック―生産プロセスにおけるグリーンテクノロジー」の別の分野に介入するような特徴は,選び抜かれた図表を見返すことにより,読者にとって明らかなものとなる。“水平に統合されたエネルギーシステム”(図4−9),“水質管理研究の構造”(図7−14),“廃棄物処理の研究分野”(図10−13)などの例において,概念とプロセスとの結合が含まれる。新しい材料方針(持続可能な開発)の重要な用語は,“汚染物質が媒体を超越する効果”(図8−11),“微生物サイクルと非生物サイクルとの相互作用”(図8−12),“浸出水および地下水に対する長期予測”(図9−19),の項目の中に見いだすことができる。汚染予防に必要不可欠な特質は,“材料および廃棄物の総合管理の三角形”(図2−8)“エントロピーおよび物質変換プロセス”(図10−2)“廃棄物処理を含む物質フロー”(図10−14),の項目から導き出すことが可能である。
 この本のさらにまとめあげられた特徴に目を向けると,特定の話題についてより詳しく説明するためには,40ページ以上のコラムを展開した。例としては,「複合サイクル:熱機関としての地球」,「持続可能なシステムのための八つの基本原則」,「環境ダメージの対策としてのエントロピー」,「環境化学物質の生態学的―化学的評価」,「環境に適応した管理の賛否両論」,「化学産業における製造総合的な汚染制御」,「廃棄物問題の心理学的考慮」,「リサイクル主導型デザイン」,「技術方針は“環境の世紀”の技術に集中しなければならない」,などが挙げられる。
 この本はドイツ語版の改訂第5版から起こしたものである。北米,日本,その他の国における例を,技術についての章の中に取り入れた。付録A(ケミカルアブストラクトの番号),付録B(大気中の毒性物質),付録C(飲料水規制),付録D(固体廃棄物埋立地)は,基本的に米国の法律および要求事項に適合するものである。ドイツについてのいくつかの引用は,脚注部分に残した。同時に,過去5年間に出版された200以上の英語の書名を,各章の主要な話題についての情報を補うために付け加えた(参考・引用文献)。
 世界中の読者に向けてこの本を書く機会を与えてくれたスプリンガー(Springer)出版社に感謝し,Erdmuthe RaufelderおよびDr.Hubertus Riedeselの2人にとくに謝意を表するものである。Annette WeissbachおよびHenning の2人による,英語での脚注や重要な情報を含む感謝すべき編集に関して,出版社ならびに著者から謝意を表す。文章および図の型板作成におけるBarbara Eckhardt,Anita Peters,および私の2人の息子Friedrick,Konradの協力に感謝する。最後に,私ならびに私の仕事に対していろいろな面で支持してくれた同僚,協力者,生徒に感謝を述べる。
1997年5月,ハンブルク(Hamburg)  
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