環境調和型モノつくり手法とその実際
= 刊行にあたって =

 国連の気象変動に関する政府間パネル(IPPC)が、「地球の気温は上昇するばかりで、21世紀末までに地球の平均地上温度の上昇は1.4〜5.8℃と予想され、このままでは異常気象や自然災害で世界が危険に晒される」と報告している(朝日新聞記事参照)。IPCCは160か国が加盟し、専門家が地球環境を分析し、評価している。

特別報告書は科学が鳴らす警鐘である。我々は、これを真剣に受け止めなければならない。産業界においても、我々は環境負荷を出さないように地球環境に配慮したものつくりを行わなければならない。

 そこで、本書では、環境に配慮したものつくりをするために必要な基礎知識、地球環境に対する考え方の歴史的変換、環境アセスメントシステム(EMS:ISO14001)の実施方法と企業の実施具体例、欧米の動向などの調査結果について記述した。また、ライフサイクルアセスメント(LCA)の基礎および筆者がLCAを実際に適用した研究事例について紹介した。更に、5Gなどの情報ネットワーク社会、次世代自動車、生分解性プラスチックなどの最近の技術トピックスについても、LCA評価を行って環境に及ぼす影響を調査したので記述した。

 本書は、主に各種製品の設計・製造に携わっている技術者、品質保証関係の仕事をされている技術者、また会社経営層の役員を対象として記述した。


 本書の構成は3章からなっている。

 第1章では、地球環境問題とその取り組みについて調査した結果を述べた。  先ず、地球平均温度の上昇とCO2の増加およびCO2排出量増大の要因をデータに基づいて説明した。そして、気象変動問題の国際的取り組みや市民による自主的取り組みの歴史的変換について述べて、環境マネジメントシステム(EMS)の背景についても詳細を説明した。ISO14001規格であるEMSの特徴および要求事項、監査について述べた。また、EMSの実施具体例を紹介した。更に、欧米の環境マネジメントの現状を調査したので記述した。
 ライフサイクルアセスメント(LCA)については、その概念、評価の手順について説明した。更に、欧米のLCAの動向についても調査結果を述べた。
最後に、廃棄物処理、ダイオキシン対策、地球温暖化対策、省エネルギー、大気汚染防止などの新しい環境技術を紹介した。

 第2章では、主に筆者が行ったLCA研究事例について説明した。
 ゴミ焼却施設のLCA、火力発電ボイラに適用されるセラミックスコーティングのLCA、自動車搭載スーパーチャージャのLCA評価結果について述べた。更に、生分解性プラスチックのLCA、次世代バイオマス燃料自動車のLCA、5Gなどの情報ネットワーク社会のLCA分析を行って環境に及ぼす影響を調査したので紹介した。

 第3章では、筆者が開発した環境に優しい技術の研究事例を紹介した。
粗面化処理を省略できる防食溶射技術の橋梁への適用、硬質クロムめっきの代替になりうるHVOF溶射技術の製紙ロールへの適用、減圧プラズマ溶射技術による難加工材の直接薄板製作技術(スプレーフォーミング)などについて述べた。
園家啓嗣
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