はじめに

ICIのFawcettとGibsonによる高圧法低密度ポリエチレンの企業化から60年、Ziegler触媒の発見から約50年が経過し、Kaminskyによるメタロセン触媒の発表からでさえ、既に20年が過ぎようとしている。
 この間、ポリオレフィンを始めとする汎用ポリマーの重要性はその生産量とともに増加し続けている。これは触媒・プロセスなど生産技術的な面からのブレークスルーによる高品質化とコストダウンをその主な要因とするものであるが、ポリマーの構造や物性の制御による製品展開面からの発達も大きく貢献している。
 一方、近年の地球環境への関心の高まりを受けて、環境負荷の低減や省エネルギーなどへの対応が必要となり、リサイクル、リユースを中心としたグリーン・ケミストリー的な技術開発も進められている。
 さらに、この数年間での欧米における巨大企業の出現と、それに対応した国内企業の再編も進み、ポリオレフィンを始めとする汎用ポリマーの世界は技術的にも、そして産業的にも正に誕生以来の転換点を迎えようとしている。
 このような状況をふまえて、本書ではZiegler触媒によるポリオレフィン製造技術の今日的到達点とブレークスルーヘの取り組み、およびメタロセンやポストメタロセン触媒を用いた新世代ポリマー創製の試みについて、触媒・プロセス・ポリマー物性という最も重要な技術に関する最新の研究開発動向を網羅して詳述した。
 本書の特色は何より著者として学界、産業界ともに現在望みうる最高の人材を得たことである。
本書が日本の高分子産業の未来を拓く新世代ポリマーの出現に貢献することを期待している。
2001年5月  北陸先端科学技術大学院大学 寺野 稔
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