発刊にあたって

 いままさに,ポリマーの分子構造をナノレベルで操作・制御するだけでなく,ナノ,マイクロ,ミリメートルオーダの階層構造,高次構造を制御し,所望の物性をもつ材料を作製可能な 時代に突入している。
 『ポリマーABC(アロイ,ブレンド,コンポジット)ハンドブック(高分子学会,高分子ABC 研究会編,NTS, 2001 年発行,B5 判全1202 ページ)発刊から10 年以上経過した。この間, ポリマーABC を科学技術面で支える高分子ナノテクノロジーの発展は目覚ましいものがあり,高分子ABC 研究会も2002 年から,高分子ナノテクノロジー研究会と改称し,当該分野の進 展に大きく貢献してきた。本書は,最近の10 年間余りの技術革新の進歩を,高分子ナノテクノロジーハンドブック〜最新ポリマーABC 技術を中心に〜,という視点でまとめ,情報発信 することにより当該学術・産業分野の更なる発展に寄与したいと考えている。
 本書の計画は,当初,世界で初めての出版となった,『ポリマーABC ハンドブック』が好評で在庫も底をつき,改訂版を是非検討して欲しいという各方面からの強い要望により始まっ た。そこで,高分子ナノテクノロジー研究会の運営委員を中心に,2010 年ごろから本格的な検討に入ったが,全面改訂となる事,内容的に高分子ナノテクノロジーが存分に入ったポリマー ABC の本となる等を考慮して,世界に全く類名のない,本書の題名が決まった。本書は,もっと早期に出版予定であったが,2011 年3 月11 日に起きた,未曾有の東日本大震災により関係 者の研究室が被災し予定が遅れてしまった。ただし,この大地震により,高分子ナノテクノロジー,高分子ABC の隠れた応用である免震用積層ゴムの抜群の効果が多くの免震ビルや免震 橋梁で実証された。
 本書出版にあたり,国内外で重要な役割を演じたり,その分野の世界的パイオニアと見なされている多くの超一流の産学官の研究者,技術者に執筆をお願いすることができた。とくに, 180 名近い執筆者のうち,約1/3 が産官,約2/3 が学からで,この分野の社会的な重要性も示していると自負している。高分子に携わる研究者・技術者はもとより,この分野に関心のある 多くの方々にとって座右の書になることを確信している。
 本書を完成に漕ぎつけることができたのは,手弁当で協力して頂いた編集委員,(株)エヌ・ティー・エス代表取締役吉田 隆氏,編集プロダクション オフィスMA の蘆田真澄女史ら の熱意とご尽力があったからこそと感謝している。

2014 年2 月吉日 編集代表 西 敏夫
 
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