= はじめに =

 技術開発におけるバイオミメティクスは、古くて新しいテーマである。人間は鳥に憧れ飛行機などを開発し(機械系)、絹糸を模倣してナイロンなどの合成繊維が生まれた。酵素を模倣した触媒開発、葉緑素を模倣しての人工光合成など以前より取り組まれているテーマでもある(分子系)。近年バイオミメティクスが改めて注目を浴びている。これは、生物を観察するための各種カメラや顕微鏡など観察のための機器や計測・分析技術などの進歩により生物の機能に関する研究が進み、そのうえでナノテクノロジーなど、模倣を実現するための「製造」技術が進歩しているためと思われる。
 当該企画では、文部科学省科学研究費新学術領域「生物多様性を規範とする革新的材料技術」の領域代表で、高分子学会「バイオミメティクス研究会」運営委員長である千歳科学技術大学教授下村政嗣先生のご監修の基、バイオミメティクスのそれぞれのステップ〜見る・測る・作る〜で使用される具体的な機器類とその使い方および手法について、それらを用いての研究結果、開発成果を、具体的な事例をもとにわかりやすく紹介する。バイオミメティクスの研究者の方には、他の研究者の方々の研究手法がさらなる研究のヒントになることを期待する。また、バイオミメティクスの研究を新たに始めようという方には、バイオミメティクスの各段階の研究がどのように行われているのかを具体例によりご理解いただけるだろう。バイオミメティクスに興味のある幅広い方にお勧めしたい1冊である。
インスツルメンテーションの視点からみたバイオミメティクス Copyright (C) 2016 NTS Inc. All right reserved.