世界の炭素繊維・応用製品の技術と市場 2020
はじめに

 炭素繊維およびCFRPは航空宇宙、自動車、風力エネルギー用途に支えられ順調な成長を続けている。航空宇宙分野では、特に民間航空機が堅調で、今後20年間の需要拡大が航空機メーカー等により想定されている。自動車分野では、燃費向上、CO2排出規制への対応ニーズに基づき、軽量化に貢献できる炭素繊維は今後ますますの需要拡大が期待されている。また、風力エネルギー分野では、洋上発電を含めブレードの大型化が進んでおり、炭素繊維なしでは成り立たない分野となっている。さらに、世界中で老巧化したインフラが問題となっており、CFRPの優れた耐久性 に寄せられる期待も大きい。上記以外の幅広い産業分野でも市場が拡大しており、コストの課題はあるものの、炭素繊維およびCFRPは工業材料としての地位を固めつつある。
 このように市場は拡大基調にあり、関連する企業はそのプレゼンス強化を目指して、日欧米の炭素繊維メーカーを中心としたサプライチェーンの統合が大きく進展している。従来、日本はサプライチェーンの上流側に強く、エンドユーザーに近い欧米企業が下流側の成形加工等に強いという傾向があったが、その構図は変わりつつある。
 また、市場拡大にともない生産性向上のニーズがますます高まっている。これに対応すべく、高圧RTMを中心に脱オートクレーブ成形の適用が進んでおり、生産性の高い CFRTP の本格的な適用もはじまりつつある。
 炭素繊維の市場拡大はリサイクルの重要性を示すものでもある。炭素繊維メーカーを中心に、使用済みCFRP製品からの炭素繊維回収・再利用技術の開発、実用化が進んでいる。
調査・執筆 平野 康雄
企画・編集 潟Vーエムシー・リサーチ
世界の炭素繊維・応用製品の技術と市場 2020 Copyright (C) 2019 NTS Inc. All right reserved.