生分解性プラスチック入門 書籍+CDセット
 〜生分解性プラスチックの基礎から最新技術・製品動向まで〜
= 刊行にあたって =

 20世紀の安価な石油資源を原料とする石油化学文明が内包するパラドックスとして,地球温暖化ガスや近い将来予測される資源枯渇問題に加えて海洋プラスチック汚染問題が顕在化した今日,地球上に生命が誕生して以降,生命が進化する過程で自然生態系が構築してきた自然界の真のリサイクルシステムとしての炭素循環にリンクした,持続可能な開発目標(SDGs)としての植物由来生分解性プラスチックが注目されている。

 筆者は1980年代の後半から今日までの約35年間,生分解性プラスチックの基礎・応用研究から技術・事業開発までを産学両分野に渡り取り組むなかでの最大の関心事は,既存石油系プラスチックを置き換えうる植物由来生分解性プラスチックを見出し,その実用化に耐え得る高性能・高機能化技術を確立することであった。今日の研究機関においては,自らが専門とする特定の素材・技術に埋没する研究者が多い中で,筆者は1980年代後半より生分解性プラスチックの理想の化学構造を求めて鋭意探索する過程で,およそ10年後の1990年代中頃に数ある生分解性プラスチックのなかでもポリ乳酸がベストであることをいち早く見出す幸運に恵まれた。

 本書「生分解性プラスチック入門―生分解性プラスチックの基礎から最新技術・製品動向まで―」は,単なる初級者向けの入門書ではない。むしろ,生分解性プラスチックの基礎と核心を踏まえた上で,その本格的な実用化を目指す中級ないし上級技術者を対象とする世界的にも最先端の学術・技術専門書でもある。本書は高度な専門的知識や技術水準を落とすことなく懇切丁寧に論述し,また理解を助けるための豊富な図表や写真はすべてカラーとするなど,これまでの専門書籍の限界を打ち破る画期的な学術・技術書である。

 第1章の序論ではグリーン・ケミストリーの系譜を遡る中で,旧来の既成概念や価値観を根底から覆すイノベーションの概念と,その達成に求められる資質と能力について論究する。第2章では,現下の海洋プラスチック汚染問題に代表される地球環境・資源・廃棄物問題の実態と生分解性プラスチックの役割について述べ,第3章では各種生分解性プラスチックの分類,基本特性と生分解機構を論述する中で,なぜポリ乳酸がベストの選択であるかの科学的論拠を明らかにする。そして,第4章ではポリ乳酸に耐熱性や耐久性、耐衝撃性などを付与するための高性能・高機能化材料設計技術について述べ,第5章ではその成形加工技術を,第6章では最新の用途・製品・市場開発動向を豊富な製品写真で紹介する。本書が21世紀における地球環境保全と持続的な資源循環型社会の構築に邁進される読者諸賢の一助となれば幸いである。
2020年9月
元ユニチカ(株),元京都工芸繊維大学 望月 政嗣
生分解性プラスチック入門 書籍+CDセット
〜生分解性プラスチックの基礎から最新技術・製品動向まで〜
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