高分子の延伸による分子配向・結晶化メカニズムと評価方法
==発刊にあたって==

 高分子材料が活躍している分野の広がりとともに、力学的特性に優れた材料に対するニーズが高くなってきている。この中には先端材料開発を目的とした理論弾性率と理論強度に近い物性すなわち極限物性を有する材料開発も含まれているとは思われるが、極限物性以下でもニーズに十分応えることができるものが多数ある可能性がある。

 本書の主な目的は、このようなニーズに応える材料開発に携わる技術者に、屈曲鎖からなる高分子の延伸について幅広い基礎知識を持っていただく一助になることである。第一章では、高分子物質の基本的特性と延伸との関係、分子鎖の引き伸ばしと配向に伴う構造発現とその制御、さらには先端材料開発の基礎となる超延伸について概説した。第二章では、主として溶融紡糸法による繊維の製造について、紡糸過程における構造発現とその制御、繊維製造装置におけるプロセスの最適化などを概説した。第三章では、フィルムの製膜と延伸に関する基礎、フィルム延伸過程における構造発現、延伸挙動解析、延伸フィルムの評価技術などについて概説した。このように高分子の基礎から製造装置までを一冊の本としてまとめた例は少ない。さらに図表・写真多用し、専門領域に関係なく広い分野の技術者や学生にも内容を理解してもらえるように心掛けた。それゆえ、機械、電気、医療、エネルギー、環境など広い領域の技術者にもお役に立てるならば幸甚である。
(『発刊にあたって』より抜粋)
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