GFRP&CFRPのリサイクル技術の動向・課題と回収材の用途開発 冊子+CDセット
= 刊行にあたって =

 熱硬化性樹脂複合材料の代表的な製品としては,不飽和ポリエステル樹脂/ガラス繊維複合材料(GFRP:Glass Fiber Reinforced Plastics),エポキシ樹脂/炭素繊維複合材料(CFRP:Carbon Fiber Reinforced Plastics)が挙げられる.GFRPは1940年代には主に輸送機器用途に開発され,小型船舶の船体,自動車本体及び部品,小型飛行機の機体などに使用され始めた.日本へは終戦後に初めてその技術が導入されたが,1960年代には,漁船,浄化槽,浴槽,パネルタンクなどが開発され,1970年代に急速に需要を伸ばした.その後も需要は拡大し続け,特に最近では中国を中心とするアジアでの伸びが大きい.

 一方,CFRPは非常に高価であったため,1970年代には釣り竿,ゴルフクラブ,テニスラケット,バドミントンラケット,卓球ラケット,スキー,自転車などのスポーツ・レジャー用品などにしか使用されなかった.しかし,2000年に入ると価格もだいぶ下がり,航空機の胴体や主翼などの一次構造材に使用されるようになってきた.また,高級乗用車,電気自動車の主要部品などにも使用されている.2020年以降は大幅に需要が拡大すると期待されている電気自動車の車体,洋上風力発電機のブレード,燃料電池自動車の水素タンクなどへの利用が広がり,CFRPの需要も急速に伸びると予想されている.

 これらのFRP製品はその特長である高強度,耐熱性,難燃性,耐薬品性などが原因となって,リサイクルを困難にしている.しかしながら,生産量が増えるに従い,廃棄物処理も大きな問題となってきた.1970年代から数々のリサイクル技術が検討されてきたが,2010年までに実用化されたのは,セメントの原燃料化技術だけである.2010年以降はFRPのリサイクル技術に関わる研究開発者の数も増え,少しずつ実用化され始めた.2015年以降は特に回収炭素繊維の再利用技術の開発が進み,自動車部品,ノートPCの筐体,建材,ベンチ,スポーツ用品,航空機部品,自転車部品,鉄道車両部品などへ利用が検討され,その一部は実用化された.

 本書では,国内外で試みられてきた一連のFRPリサイクル技術を紹介する.本書では分かりやすくするために,通常,マテリアルリサイクル,ケミカルリサイクル,サーマルリサイクルと大別されるリサイクル技術を,さらに細かく,マテリアルリサイクル,熱分解法,超臨界流体法,加溶媒分解法,その他の回収技術,易分解性樹脂,再利用技術に分類し,年代順に紹介する.最後の結言で,それぞれのリサイクル技術を実用化した企業をまとめた.

柴田勝司
GFRP&CFRPのリサイクル技術の動向・課題と回収材の用途開発 
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