世界のマテリアルズ・インフォマティクス 最新業界レポート 冊子+CDセット
== はじめに ==

 マテリアルズ・インフォマティクス(MI)は、機械学習、実験、シミュレーション、データベース、クラウド・コンピューティングなどの領域の技術を組み合わせたもので、よりスピーディーに新素材を開発・商品化することが可能になっている。膨大な量のデータを高速に扱える環境が整ったことで、MIの利用が促進されている。

 本レポートを刊行するにあたり、主にMIの用途別開発動向を調査した。例えば、高分子材料では、一般的には分子量が1万以上の化合物と定義され、名称が同じ材料であっても分子量や分子構造、製造プロセスの違いによって発揮される機能や効果が異なる。そのため、より正確にMIを適用するためにはそれらの違いを全てデータベース化することが求められている。しかしながら、分子構造や物性に関して、同条件の実験データを揃えることが困難であり、温度や混練条件等のプロセス条件による影響が大きいことから、高分子材料のMIの活用はさほど進んでいない状況である。

 MIは、物質特性データベースとAIを活用して新素材を効率的に探索する手法として注目されている。これまで研究者個人のスキルに依存していた開発や検査のプロセスを、各社は同アプローチに基づいて高速化する取り組みを進めている。

 新たな取り組みを始める際には、支援サービスなど外部の知見を活用するケースと、自社単独で全てこなすケースがある。近年、MIを初めて導入する場合には、支援サービスなど外部の知見を取り入れるメーカーが増えてきている。材料に対する知見は自社で確保できるが、適切な機械学習アルゴリズムの選定や機械学習に活用できるデータ形式の環境には、MIに関する専門知識が必要である。実際に、日本企業は、独Mats2Market、米QuesTek、米Enthought、米CitrineInformaticsといったMI支援サービス企業と提携し、素材開発の効率化に注力している。

 さらには、大規模な分子を分析することが可能ということで、素材産業における量子コンピューティングのユースケースの探求にも関心が高まっている。現在、企業は従来のコンピュータで何億もの比較を実行しているが、実際に計算できる特定のサイズまでの分子のみに制限されている。量子コンピュータが実用化されれば、はるかに大きい分子を比較することが可能になり、膨大な数の化学物質の機能を調べるシミュレーションの短時間ができ、創薬の研究スピード向上と開発効率化が進んでいく。

 本レポートは、マテリアルズ・インフォマティクスに関するビジネス・技術に関わる企業を主に調査した。今後の展開を見据えたうえでの次世代ビジネスにつながるレポートになっている。

CMCリサーチ調査部
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