電池の回収・リユース・リサイクルの動向およびそのための評価・診断・認証
= 刊行にあたって =
 「電池そのものを再利用」することをリユース,「電池を解体して原料を再利用」することをリサイクルと呼ばれている。

 既にEVが普及し始めてから10年以上が経過し,今後,使用済み車載LIBの廃棄量も相当程度進んでいく。EVでの一次利用を終えた電のほとんどは能力が80%程度を残したまま廃棄されていたが,現在ではリユースの有効利用が進みつつある。

 ただ,回収した電池の状況が課題となっている。LIBパックの検査や装置内でのLIBの性能の計測・検査,及びリユース用途に応じた修復作業にかかるコストが高い。リユース電池の信頼性およびパフォーマンスを担保するために,有効な検査システムの確立が必要とされる。

 また,LIBは,使用期間や使用条件などにより電池の内部状態が変化し,容量劣化などに至る。それゆえに,EVやPHEVの車検や転売時の査定,及び定置用蓄電システムの保守点検では,搭載されているLIBの健全性を診断する技術が求められる。

 LIBを確実に動作させるために,LIBのセル製造,LIBパックの検査,装置内での運用中,そして運用後など,さまざまな場面でLIBの性能を確認する計測・検査が実施されている。

 一方,リサイクルに関して,「乾式製錬」は,一般的に高温の炉で原料を溶かし,溶けた状態で金属を分離する方法である。LIBを直接投入できるという利点はあるが,消費エネルギーが大きく,リチウムの回収は困難である。「湿式製錬」は,酸・アルカリ・溶媒などの水溶液中で金属の分離を行う方法である。比較的小規模の設備でも操業可能であり,精密な分離の期待が高まっている。ただ,全元素の回収が可能になるという利点があるが,処理工程が複雑になり,薬剤費も大きい。

 現状,リサイクルのための精製過程のコストは新品のLIBより高価である。それゆえに,各社はLIBのセルを構成する部材をできるだけ壊さずに,かつ,エネルギーをできるだけ使わずに取り出し,リユースすることに注力している。

 本書では,リユース・リサイクル技術の産業利用を目的とした,大学と企業の両立場から取り上げた構成となっている。各論において貴重な玉稿を提供された執筆者各位に感謝すると共に,本書が読者の皆様のご期待に多少なりとも沿えられることを願うものである。


シーエムシー・リサーチ編集部
 
電池の回収・リユース・リサイクルの動向および
そのための評価・診断・認証
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