微生物機能を活用したレアメタル・貴金属リサイクル 〜最新の研究動向と技術シーズ〜
= 刊行に寄せて =
 金属資源を海外に大きく依存せざるを得ない状況のなかで、都市鉱山(使用済み家電、電子機器、触媒、工業廃液等)に含まれる希薄なレアメタル・貴金属をもリサイクルする資源循環システムを構築し、自給体制を強化することは重要なテーマである。しかしながら、地金価格が高い貴金属を回収すれば大きな利益が見込めるにもかかわらず、その国内リサイクル率(リサイクル量/国内需要量)は低調に推移している。この「もったいない」現状から脱却して金属資源の安定供給確保を図るためには、都市鉱山に低濃度で存在するレアメタル・貴金属を高効率に低コストでリサイクルできる脱炭素型技術の研究開発が俟たれるところである。

 当書は、従来の金属リサイクル技術とは発想を異にする「生物学を基盤とする金属リサイクル技術」の研究開発を目指して、その技術シーズとなる「微生物機能を活用するレアメタル・貴金属等の分離回収(バイオソープション、バイオミネラリゼーション等)」について、国内研究者による研究成果を集大成して出版したものである。これらのバイオ技術シーズは、常温・常圧下での微生物機能を利用してレアメタル・貴金属を高効率に分離濃縮・回収できることを示唆するものであり、金属資源循環におけるGX技術の研究開発にも繋がるものとして期待できる。

 サーキュラーエコノミー(循環経済)への移行に関心が集まる昨今、幅広い分野の産業に不可欠なレアメタル・貴金属を対象としたバイオ湿式リサイクルは、脱炭素型資源循環システムの開発に向けた取り組みとして、「ものづくり」に携わる方々にとって興味深いテーマであろう。当書は、バイオ分離技術をベースにしたレアメタル・貴金属リサイクルに係る最新の研究動向を把握しようとする際にも、大いに役立つものと確信している。また当書を通して、金属資源・素材分野における微生物機能の活用について、関心を寄せる研究者や技術者が数多く現れることを期待する。

 最後に、ご多用にもかかわらず、貴重な時間を充てて本書にご執筆いただいた先生方に深く御礼申し上げます。

大阪公立大学   小西康裕
 
微生物機能を活用したレアメタル・貴金属リサイクル 
〜最新の研究動向と技術シーズ〜
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