本著は「データで示す具体的で分かりやすい話」に主眼を置くことで、素朴な疑問の「ナゼ」に対して簡潔な解答と判断の根拠をコメントすることにより、奥深いクリーン化技術の世界と真剣に向かいあうチャンスとなれば嬉しい限りである。また、クリーンルーム、準クリーンルーム、あるいはクリーンルームがなくともクリーン化を目指すときの運用や管理の実践において、何が必要で何をやるべきかの具体的な指針を織り込むように心がけた。これについては、必要に応じて関連する画像や動画を示し解説を加えることで、文章で表現しにくい内容を補完するようにした。動画は説得力のある解説をするためには必要なツールである。一説では写真一枚で2000文字に相当すると言われているが、動画は文字による表現力を確実に上回り、理解するのに効果的である。しかしながら、動画にばかり頼ると直感では理解できるものの、そこから本質を探り当てるためには、どうしても文章による表現が必要不可欠であることには変わりない。
著者がクリーン化技術に取り組んだ初期の頃は、1995年頃からの半導体産業が急成長したころであった。この時代の前工程(ウェーハプロセス)は、異物・塵埃を減らせば、その分、確実に不良率が低減できる時代であった。その次は、酸・アルカリ・有機溶剤、ゴム・プラスチックス類からの可塑剤など、クリーンルームに存在する殆どの薬液・材料から分子レベルの物質が飛散し製品不良の原因となる分子状汚染にも取り組んだ。このときの汚染防止管理濃度の目安はppm,ppbレベルである。これらはしっかりした表面分析技術を保有していないと、不良原因の追求や対策が極めて困難な世界である。次に、2002年頃以降に取り組んだクリーン化技術は、後工程(アセンブリプロセス)であった。このとき、後工程でのクリーン化技術が将来、当たり前となる予感のもと、Class1000〜10000(Fed.209D)の導入および定着化に尽力してきた。また、静電気対策においては静電気の本質を追いかけると共に、現場における対策法や運用管理まで、教育と実践を続けてきた。この時代のクリーン化への取り組みは、関係した経営者・管理者は軽く見ていた。

2005年以降はクリーン化の重要性も再認識され、半導体以外にも電子材料・電子部品産業の他、塗装分野や医薬・食品分野など、目視レベルの塵埃・異物対策は間違いなく裾野が拡がった。本著は目に見える大きさの塵埃・異物対策に主眼を置いたが、この時代に取り組んだ数々のデータを基に、新たに最近のデータや動画も加えた。更に、現場での管理や指導に関しても、門外漢ながら自論を述べさせていただいた。

本著では、クリーン化技術を正しく理解し実践して貰うために、出来るだけ難しい表現を避け、平易で分かりやすく簡潔に執筆した。この趣旨を十分に理解頂いたうえで、自社のラインで活用し展開頂ければ幸甚である。
 
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