3Dプリンター・造形材料の市場動向と最新業界レポート
= 刊行にあたって =

 世界では、3Dプリンターの開発競争が激化している。樹脂材料用の3Dプリンターは、米国製が大勢を占めるが、中国などの新興国では低価格帯の3Dプリンターが多数販売されており、国産機も複数のメーカーが開発・販売している。価格帯は10万円以下から5,000万円程度までと非常に幅広い。

 現在の3Dプリンターの本格普及の背景には,熱溶解積層方式,光造形方式,粉末焼結方式の3種類の製法が特許切れとなり,新規参入企業が多数生まれることである。それゆえ,デスクトップタイプの3Dプリンター価格は下落傾向であり,現在では1台あたりの価格は2〜3万円程度の機種まで登場している。

 国内の3Dプリンターの出荷台数を見ていると、50万円以下のコンシューマータイプの3Dプリンターの出荷が減少している。これは興味本位でデスクトップ3Dプリンターを購入するユーザーが減少しているのが背景にある。他方、今後は産業用途のミドルレベルタイプ(50〜300万円)の3Dプリンターの出荷台数は年率1〜3%増と緩やかに伸びていく。製造業を中心に着実に適応範囲が広がり、市場が少しずつ拡大していく。
 3Dプリンターの市場では,3DsystemsとStratasysの米国の2社で70%以上の市場シェアを誇っているが,金属3Dプリンターではドイツが圧倒的である。ドイツが占める市場シェアは67%で,そのうちEOS社が占める割合は38%である。金属3Dプリンターでニーズが高いのは、航空機用の部品である。Airbusは、ジェット機用パーツの生産を3Dプリンターに切り替えることで,材料消費量が75%削減させ、GeneralElectricはエンジン部品や燃料ノズルで実用化を進めている。さらには宇宙分野などにも用途が広がってきている。

 そもそも3Dプリンターの起源は日本であるが,商用化に出遅れたのがシェア低迷の要因である。樹脂の3Dプリンターは海外に先行されているが,金属の活用はまだ巻き返すことができるであろう。

 本レポートでは、各種3Dプリンターの価格動向、世界の3Dプリンター出荷台数推移と予測などを調査した。また国別の3Dプリンターの動向や3Dプリンター企業・関連企業の動向をまとめた。さらに3Dプリンターの技術が発展することによる航空・宇宙・自動車業界、電子回路業界、医療・ヘルスケア、食品、フットウエアなどの業界に与える影響を追った。
 
3Dプリンター・造形材料の市場動向と最新業界レポート Copyright (C) 2019 NTS Inc. All right reserved.