初めての人も、技術者も理解できる 抵抗スポット溶接技術の基礎とアルミ合金・異材接合への応用
 書籍+CDセット
= 刊行にあたって =

 抵抗溶接機は先ず同じ断面積の棒を突き合わせて抵抗溶接するバット溶接機が1世紀半前に発明され、抵抗スポット溶接機は1世紀前に発明された。溶接には種々の方法があるが、その中では抵抗スポット溶接は比較的新しい方法である。戦後は抵抗溶接技術が飛躍的に発達し、自動車、鉄道車両、家電製品などの多くの産業分野で使用され、ロボットなどの普及により自動化も進んでいる。現在は、自動車や車両は、燃費向上のため軽量化が推進されており、そのためにアルミニウム合金が適用されているが、アルミニウム合金はその堅固な酸化皮膜のため接合が難しい。自動車パネル用のアルミニウム合金の接合には、リベットや摩擦撹拌と比べて容易さの面で抵抗スポット溶接が適している。

 また、構造的に安全性確保のため高強度鋼を使用せざるを得ないため、どうしても鉄鋼/アルミ合金の異材抵抗スポット溶接も必要になると考えられる。しかし、異材抵抗スポット溶接についてはまだ不明な点が多く、これからの新しい技術であると考えられる。

 今まで、抵抗溶接については出版された書物はあるが、アルミニウム合金や、鉄鋼/アルミニウム合金の異材抵抗スポット溶接に絞って分かりやすく説明された専門書はほとんどない。従って、本書では、アルミニウム合金の抵抗スポット溶接技術について、更にはこれから必要になる技術である鉄鋼/アルミニウム合金などの異材抵抗スポット溶接について、現場で製造に関わっている技術者、溶接技術関係の仕事をされている技術者、また将来これらの分野に進まれる予定の学生を対象にして、抵抗スポット溶接の基礎的な知識(溶接装置、溶接現象、溶接部組織など)から小職が今まで抵抗スポット溶接技術関係で研究してきた専門的な内容(アルミニウム合金、鉄鋼/アルミニウム合金の異材接合)まで幅広く解説した。

 1章では、アルミニウム抵抗スポット溶接機の構成、分類、電源方式(直流、交流式)、通電方式、電極、制御方法、力率、容量、適用分野などの抵抗スポット溶接に関する基礎的事項を説明してある。

 2章では、アルミニウム合金の種類と特徴、アルミニウム合金を抵抗スポット溶接する場合の原理、フリンジング現象、電流密度、接触抵抗、溶接部の冷却機構などの溶接現象について説明し、溶接部の特徴や溶接欠陥とその対策についても述べた。また、溶接条件(電流、加圧力、通電時間)の設定方法、表面処理の影響などについて説明した。更に、溶接部の接合強度の評価方法、抵抗スポット溶接部の品質モニタリング方法についても述べた。

 3章では、先ず、鉄鋼へ抵抗スポット溶接を適用した場合の、溶接条件が接合部ナゲット形状に及ぼす影響、更にマルテンサイトなどの組織形態が溶接部の強度に及ぼす影響について述べた。次に、アルミニウム合金へ抵抗スポット溶接を応用した場合の溶接条件が接合部ナゲット形状に及ぼす影響、更にナゲット形態と溶接部の強度との相関性を、鉄鋼の抵抗スポット溶接と比較することにより説明した。最後に、鉄鋼/アルミニウム合金の異材重ね接手に抵抗スポット溶接を応用した場合に溶接条件が接合部ナゲット形状に及ぼす影響、組織形態が溶接部の強度に及ぼす影響について述べた。異材接合で問題となる金属間化合物生成による接合強度低下や、アルミニウム合金で発生しやすいミクロ割れ等についても考察したので説明した。

 園家啓嗣
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抵抗スポット溶接技術の基礎とアルミ合金・異材接合への応用
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