初めての人も、技術者も理解できる 切断加工技術の基礎とその応用 書籍+CDセット
= 刊行にあたって =

 切断加工は、建築物、橋梁、鉄道車両、産業機械、船舶などの鋼構造物を製作する時の最初の製造工程である。次の溶接工程では、前行程で切断した部材の寸法精度や切断面品質に不良があると、手直しなどの作業が生じたり、溶接の品質にも悪影響を及ぼす。さらに、その後の組立工程にも少なからず影響を与えることから、鋼構造物の製作において切断加工は非常に重要な工程である。切断加工のほとんどは、主に産業革命以降に開発され、第一次と第二次世界大戦を契機として発達した技術である。電気利用以外の切断の原理は古くから理解されており、特に熱化学的な現象は戦争に応用されて古代から利用されていた。個々の技術は洗練され、切断能力と制御技術は、1970年代の自動化技術の進展により大きく発展した。

 切断方法には、刃物を用いた機械的切断と、光や電気、炎を熱源とした熱切断がある。単純形状の切断には機械的切断も用いられるが、複雑な形状の切断には、任意の形状が容易に切断できる熱切断が一般的に使用されており、代表的な熱切断法としてガス切断、プラズマ切断、レーザ切断などが挙げられる。

 本書では、各種製品の設計、製造に携わっている技術者、切断関係の仕事をされている技術者、また将来これらの分野に進まれる予定の学生を対象にして、切断加工技術の知識とその応用例について記述した。

今までの出版物は一種類の切断技術について解説したものが多く、各種の切断加工技術を横断的に説明し、切断加工の全体像が理解できる書物はほとんどない。従って、本書では各種の切断加工技術の原理、特徴(長所、短所)、切断品質の比較評価などについて出来るだけ具体的に説明し、切断加工技術全体が容易に理解できるようにした。また、最新の切断加工技術についても説明し、切断加工技術がどのようにして材料や製品に応用されるかを理解できるようにした。全体を通して出来るだけ図や写真および表を使って、視覚的にわかり易くなるように心掛けた。

 本書の構成は2章からなっている。

 1章では、切断加工技術の重要性、切断加工法の種類などについて説明してある。更に、切断加工技術を機械的切断と熱切断に大別して、それらの特徴について対比して説明している。

 2章では、先ず機械的切断について述べた。機械的切断には、せん断、切削、研削およびウォータジェット切断などがあり、それら原理、特徴、適用例などについて説明してある。次に、熱切断について述べた。熱切断には、ガス切断、アーク切断、放電加工、プラズマ切断、および新しい技術としてレーザ切断などがある。ガス切断については、古くから使用されており、その歴史、原理、特徴について述べた。更に、最新のアプリケーションとして水素ガス切断が開発されており、この切断法のメリット等についても説明してある。アーク切断では、その歴史、各種のアーク切断の原理、特徴について説明した。また、溶極式ウォータジェットアーク切断を原子炉部品の水中解体に適用した例についても説明してある。放電加工では、精密加工が可能な型彫り放電加工とワイヤカット放電加工の特徴とその切断性について述べた。プラズマ切断では、その歴史、原理、特徴について説明してある。更に、切断条件が不適切であると、ノズルの損傷、アークを緊縮させるノズルの変形など様々な品質悪化の要因となるなどの課題についても述べた。水中プラズマ切断や最近のアプリケーションである高品質切断についても説明してある。最後に、レーザ切断では、その原理、特徴、レーザ切断機の種類について説明してある。また、レーザによる水中切断への適用、最新の技術であるファイバーレーザ切断機についても切断能力などの特徴を紹介してある。
   
初めての人も、技術者も理解できる 切断加工技術の基礎とその応用
書籍+CDセット
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